パンダジャーナリスト中川美帆コラム「2月21日・シャンシャン中国へ」
※本稿は2月20日公開「ジャイアントパンダ・シャンシャン特集 - Yahoo!ニュース」内コンテンツの再掲です。
シャンシャン中国へ 「機内持ち込み」は好物のリンゴに変更
シャンシャン(香香)がいよいよ中国へ旅立ちます。本稿の締切はシャンシャンの出発前日の2月20日なので、それまでの取材で分かった渡航の詳細を明らかにします。 シャンシャンは2月21日朝、特注のケージ(輸送用の檻)に入り、トラックに載せられ、午前7時ごろに上野動物園を出発します。目指すは成田空港。シャンシャンにとって、生まれ育った上野を出るのは初めてです。このトラックには上野動物園の獣医師1人と飼育係1人も乗ります。 そして、別の車で成田空港へ向かう同園の冨田恭正副園長兼飼育展示課長と飼育係の齋藤圭史さんの計2人がシャンシャンと一緒に中国へ行きます。齋藤さんはシャンシャンの誕生時からずっと飼育してきました。中国・四川省の成都で2019年11月に開催されたジャイアントパンダの国際会議で飼育・研究の成果を発表したこともあります。 シャンシャンは成田空港に午前9時ごろ到着する予定。空港に着いたら「車上通関」つまりトラックに乗ったまま通関手続きを済ませます。乗る飛行機は、中国の大手貨物会社、順豊(じゅんほう)航空のチャーター便「O3(オースリー)7564便」。貨物機です。旅客機は一般的に乗客の座席の下のエリアに貨物を積みます。一方、貨物機は、旅客機における乗客の座席部分に貨物を積むイメージなので、冨田副園長らと同じ高さにシャンシャンがいます。 順豊航空は、成田空港に自社の上屋(うわや)がないので、提携しているJALカーゴの上屋を利用。ここで飼育係の立ち合いのもと、ケージにボードを施す予定です。搭乗する際、シャンシャンがケージのすき間から外を見て、興奮状態に陥らないようにするためです。 同機は12時45分に日本を離れます。シャンシャンの渡航を手配したのは阪急阪神エクスプレス。上野動物園と神戸市立王子動物園のパンダの輸出入をすべて担当してきたエキスパートです。同社によると、コックピットの後ろに少し座席があり、冨田副園長と齊藤さんは、そこに座ります(コックピットには入れません)。その後ろにはパーテーションがあり、メインデッキと隔てられています。シャンシャンのケージを搭載するのは、このメインデッキで、ちょうど機体の中央付近。コックピットからシャンシャンまではおよそ15~18mとのことです。安定飛行に入り、機長の許可が下りれば、2人はメインデッキへ行くことができます。 シャンシャンの飛行機移動では「ストレスは当然あると思います。普段と違う輸送用の檻に入り、長時間移動するので。そのため訓練して檻に慣れさせたり、飼育の者が同行したりして、なるべくストレスをやわらげるようにしています」(上野動物園教育普及課の大橋直哉課長)。 上野動物園によると、機内にはパンダ団子(とうもろこし粉などを混ぜて蒸して冷ましたもの)、タケノコ、リンゴ、水を積み込みます。ペレット(動物用ビスケット)も予定していましたが、数日前にリンゴへと変更されました。リンゴはシャンシャンの大好物です。遊具は持って行きません。