打倒エヌビディアなるか、IPO申請した米新興「セレブラス」に注目すべき理由
Cerebrasの将来性は?
■顧客の集中が課題 エヌビディアも直近の四半期で売上の40%以上を4社の大口顧客で占めるなど、顧客の集中という同様の問題を抱えている。セレブラスの場合、顧客の集中は、企業ライフサイクルのどの段階にあるかを示す重要な問題と言える。特に、プレゼンテーション資料しか持たないスタートアップ企業であれば、潜在顧客を交渉のテーブルに着かせるには、多大な営業努力と説得が必要となる。今回のIPOによって、セレブラスは巨大IT企業のレーダー網に捕捉されていない、アブダビ首長国を本拠とするAI企業、G42のような顧客をもっと見つけることができるようになるかもしれない。 セレブラスの目論見書によると、G42は今年上半期におけるセレブラスの収益の87%を占めている。G42は来年4月までに3億3500万ドル(約491億8800万円)相当のセレブラス株を購入する契約を結んでおり、これによりG42は5%以上の株式を保有することになる。G42とその子会社は既にセレブラスのWSEを購入し、36エクサフロップス(1秒間に3600京回の浮動小数点演算を行う処理能力、エクサは10の18乗)の巨大な分散スーパーコンピュータを構築中だ。 アナリストとして、私は投資家からよくこんな質問を受ける。「最大の潜在顧客が既に独自のAIチップを開発しており、当然ながら膨大な数のエヌビディア製GPUも購入していることを考えると、セレブラスはどのように成長していくことができるのか?」と。そんなとき、私は彼らに、G42の名前を聞いたことがあるかと尋ねる。G42はセレブラスのWSEを購入し、巨大なAIインフラを構築している。そして、G42のように、国家主導のAI開発拠点や二番手グループのパブリッククラウドとして、地域独自のAI工場構築のための資金提供を受けている企業はあと十数社はあるはずだ。おそらく、あと彼らに必要なのは、購入の許可を得ることだけだろう。 ■結論 セレブラスのIPOに対する市場の反応を見るまでは時間がかかるが、その反応は非常に力強いものになるだろうと私は考えている。投資家たちは、エヌビディアの代わりとなる企業に投資したいと考えており、AMDはすでに評価が十分に高いと見なされている。AI市場もまた、AI展開に使用できる代替手段を求めており、セレブラスの価値提案は、トレーニングと推論の両面において非常に魅力的だ。 セレブラスがIPOを成功させれば、これまでスタートアップからの購入を避けていた企業も、同社の技術を採用する可能性が高まる。成功がさらなる成功を生むのだ。
Karlyn Bowman