打倒エヌビディアなるか、IPO申請した米新興「セレブラス」に注目すべき理由
信じ難いかもしれないが、AIハードウェア企業のIPOは未だかつて一度も無い。皆無だ。なぜか? それは、どのスタートアップもエヌビディアのように単独で成長していくために必要な勢いに達していないからだ。しかし、セレブラスが米国証券取引委員会(SEC)に新規株式公開(IPO)を申請したことで、この状況は変わるかもしれない。IPOは年末までに実施される可能性がある。詳しく見ていこう。 ■セレブラスとはどんな会社か 以前にも私の記事を読んだことがある人なら、セレブラス・システムズと、そのCEOであるアンドリュー・フェルドマン(私とは12年来の知り合いだ)、そして彼らのAIコンピューティングへの独創的なアプローチであるウェハー・スケール・エンジン(WSE)を私が高く評価していることを知っているだろう。そのアイデアは非常に明快で、抗しがたい魅力を持っている。 基本的なアイデアは、ウェハーをチップに切り分け、高帯域幅メモリ(High Bandwidth Memory、HBM)を使ってパッケージングし、ボードに搭載してコンピュータに組み込み、そして何百ものチップを高価なネットワーク経由で相互接続する代わりに、ウェハー上に存在するチップを直接相互接続してしまうというものだ。これがウェハー・スケール・コンピューティングであり、今後5年間で巨大なトレンドになると私は考えている。さらに、セレブラスはHBMを必要とせず、オンチップSRAM(チップ内の高速メモリ)を使用し、外部のストリーミングウェイトサーバーで補完している。もちろん、ウエハー全体を冷却し、電力供給するのは難しく、ウエハー上には必ず欠陥が発生する。しかし、それでもこのアプローチの計算性能は魅力的で、成功しないはずがない。ただし、ソフトウェアがきちんと整備されていればの話だが。 ■なぜ今、IPOなのか? タイミングは良いかもしれない。セレブラスの収益は2024年前半に14倍以上の1億3640万ドル(約200億3300万円)に成長し、同社の純損失は7780万ドル(約114億2600万円)から6660万ドル(約97億8490万円)に減少した。これは成長を加速させるためにさらなる資金を調達するには良い状況となる。しかし、共同創業者でCEOのアンドリュー・フェルドマンは、ベンチャーキャピタルに再び頼るのではなく、株式市場はすでに生成AI関連企業を受け入れる準備ができていると考え、そこに踏み込もうとしている。