大きなミスをした入社2年目の新人に「休日出勤」をお願いしたら…長い沈黙のあと「想定外の反応」
職場におけるハラスメントといえば「セクハラ」や「パワハラ」が一般的だが、時代の移り変わりか、ここ数年で様々なハラスメントが登場している。ハラスメントとは、相手が嫌がる行為や言葉によって不快感を与えることだが、相手を気遣ったつもりでとった行動がハラスメントに当たるケースもある。最近話題になっている「ホワイトハラスメント」について具体的な事例を挙げて考えていきたいと思う。 【写真】心ない人に「マウンティング」されたら使いたい…相手をビビらせるフレーズ
大きなミスをした新人に休日出勤をお願いしたら…
この季節になると、Aさん(仮名、以下同)との間で起きた出来事を思い出す。数年前の出来事になるが、「ホワイトハラスメント」について考えるさいの事例として、プライバシーに配慮した上で一部脚色して紹介したい。 この夏の暑い時期、私たち社会保険労務士の業界は超繁忙期を迎える。そんなときに起こった出来事だ。当時の彼女はまだ入社2年目くらいの新人だった。私のチームに配属となり、5千人を超える企業X社を一緒に担当することになった。 7月初旬、行政への書類提出期限が迫っていた時だった。Aさんの大きなミスが発覚し、X社全従業員のデータを再確認しなければならない事態となった。企業規模の大きいX社の届出を期限に間に合わせるには、土曜・日曜の休日出勤をするしかなかった。期限が迫っているのはX社だけではなかったので、時間的余裕は全くなかった。 うなだれていた彼女に、「Aさんのミスはチームの責任だし、私も土曜・日曜でるから、一緒にやるしかないよね」と、そんなことを言ったと思う。2人でやれば土曜日だけの休日出勤で済むかもしれない。 ところが、Aさんからは予想だにしない言葉が返ってきた。「私、その日は予定があるので、出勤できません。」「え?」少し間を置いてから、私は少し強めの口調で「どうして?」「じゃあ、どうするの?提出期限に間に合わないよ!」と聞き返した。Aさんが休日出勤を頑なに拒んだ理由は、その土曜日が彼女の誕生日で、友人達がお祝いをしてくれるという約束があるからだった。Aさんはうつむいたまま、かなりの時間が経過したが、それ以上何も言ってこない。どうやら出勤しようという気はなさそうだ。 しかたない。若いAさんにはプライベートも大切な時間だ。腹立たしい気持ちもあったが、正直なところ、2日あれば1人でこなせない業務量ではないし、休日出勤を強要して退職されても困る。何よりAさんにまたミスをされて時間をとられるよりは自分一人で作業する方が集中できて効率もよいと考えていた。だから「じゃあいいよ。私がやるからさ。」と彼女に言った。とたんに、Aさんは泣きながらトイレに走って行き、その場から立ち去った。様子を察した同僚が追いかけていった。 その後、Aさんから話しかけられることもなく、土・日は1人で出勤した。案の定、集中して作業をこなすことができ、何とかX社の行政への届け出も期限に間にあった。 当時の私は、「泣かせてはしまったが、責任感という意味合いにおいてAさんだって少しは反省もしただろうし、なにより彼女の思い通りに友人達から誕生祝いもしてもらえただろうから、私は後輩のプライベートも大事にしたよき先輩なんだ」と、違和感を持ちながらもそう思うことにした。結果的には良いことをしたのだ!