トヨタの"隠し機能"がスゴイ!! ハイブリッドだからできる技!? 13年前に登場[バネ上制振制御]ってなんだ?
現在販売されているトヨタのハイブリッドモデルのほとんどに、ひっそりと搭載されている機構が「バネ上制振制御」だ。カタログなどで名前を見たことがある人はいると思うが、実際に何をしているのかは結構ナゾなシステム。ただ、この謎のシステムは、ミニバンやSUVの快適性を大きく高める魔法の技術なのである。 【画像ギャラリー】乗り心地の違いを試乗で体験してください!!バネ上制振制御を採用するトヨタのハイブリッドミニバン(20枚) 文/佐々木 亘:写真/トヨタ
■元はアベンシスに搭載された技術!HEVではプリウスαが先駆者
バネ上制振制御が世に広まったのは、初代プリウスαの登場がきっかけだ。それ以前にも、この技術はあったわけだが、駆動用モーターを積み込まない純エンジン車では、ディーゼルエンジンの方が相性は良く、アベンシスに搭載されていた。 だが、アベンシスのディーゼルは国内導入が無く、プリウスαの登場でも当時は比較する車両が無かったため、ディーラースタッフの中でも「こういう機能があるのね」くらいにしか思われていない機能だった。時は2011年のことである。 その翌年、21系クラウンが登場。これを機に、バネ上制振制御の優位性がディーラースタッフにも、自動車ユーザーの中でも、直に感じられる存在となっていった。
■バネ上制振制御って一体何をしているの?
この機能は、駆動用モーターを使うため、ガソリン車とHEV車が併売されているモデルでは、HEV車にしか搭載されていない。機能の目的は、乗り心地を向上させることにある。システム概要は次の通りだ。 路面の起伏に応じて、リアルタイムに駆動用モーターのトルクコントロールを行う。これにより、路面からのピッチ挙動を低減することができる。 例えば、フロントタイヤが路面から入力を受けると、通常は車両がリフト(車両前部が上がり後部が下がる状態)する。この時にモーターの駆動力を弱めることで、アンチリフト(車両前部が下がり後部が上がる状態)方向に車両をコントロールするというもの。 逆に車両がダイブ(車両前部が下がり後部が上がる状態)では、モーター駆動力を強めて、アンチダイブ方向へ車両をコントロールする。 これにより、車両の前後方向の揺れ(ピッチ)が低減され、乗り心地が良くなるのだ。 乱暴にわかりやすく言うと、クルマがアクセルを踏んだ時のように「ふんぞり返る」状態のときには、ブレーキをかける要領で車両を前に「つんのめらせ」て、車体の水平を保つ。クルマがブレーキをかけたときのようにつんのめったら、モーターで加速させて水平をとってくれるのだ。 これをドライバーに加減速がほとんど伝わらないように行うのが、バネ上制振制御のすごいところ。車両姿勢の安定は、タイヤの接地性を高めることにもつながり、操舵フィールも高まる。 バネ上制振制御は、乗り心地と走りの良さに直結する魔法の技術と言えるだろう。