【イラン崩壊を真剣に狙うイスラエル】苦境のイランに勘違いのイスラエル、米国が招いた悲劇
イランのイスラエル攻撃の本当の意図
この論考は、イランが置かれている苦境を正確に指摘しており、今回の中東の混乱が米国発という点に触れていないということを除いて大変良い分析だ。つまり、今回の中東情勢の流動化は、バイデン大統領がレガシー作りのために昨年夏以降、強引にイスラエルとサウジアラビアの関係正常化を進め、その結果、パレスチナ問題が一層マージナライズされることをハマスが恐れ、これ以上イスラエルの影響がペルシャ湾地域に及ぶことをイランが恐れたという事情があった訳で、今回の混乱は米国発だという点だ。 論説も指摘する通り、イランがミサイル攻撃でイスラエルに対して抑止力を回復させる程のダメージを与えていないのは間違いない。しかし、それはイランの無能さが理由ではなく、意図的に抑制してきたのだろう。
イランのイスラム革命体制の目標は、革命体制の護持と域内の覇権国家となることであり、イスラエルと戦うというのはアラブの支持を得たり、域内に代理勢力を展開したりして、イランの域内の影響力を高めることが目的だ。つまり、イスラエルとの対峙はそのためのプロパガンダであり、手段に過ぎず、イランが本気でイスラエルの滅亡を意図していたとは思えない。 従って、今回、イスラエルが本気でイランを挑発して来たことは、イランにとり迷惑以外に他ならず、イラン側は、全面衝突に至らぬようミサイル攻撃は市街地を意図的に避けていると見るべきだ。
イスラエルの勘違い
しかし、どうもイランのプロパガンダを本気にしたイスラエルは本気でイランの革命体制の崩壊を狙っているようである。イランもこれまでのような抑制的な対応では済まなくなりつつある。 今後、イスラエルが具体的にどのようにしてイランの革命体制を崩壊させようとしているのか、そして、ヒズボラが弱体化し、ミサイル攻撃も限界があるなか、体制の崩壊の危機を感じたイラン側がどのようにして抑止力の回復をしようとするのか要注目である。仮にイスラエルが勝利しても犠牲の大きすぎる勝利となろう。
岡崎研究所