登山者のための火山のリスクヘッジ! 活火山に登るための登山計画とは
国土の約70%が山地という日本。4つのプレートがせめぎ合う場所にある国土は、〝地震大国〟であると同時に、〝火山大国〟でもあります。富士山をはじめ、登山者に人気の高い名山にも火山が多く含まれています。登山中に、もしも噴火に遭遇したら……!? 【写真】登山前に押さえておくべき火山活動に関する情報を見る(全6枚) 今回は、噴火の可能性がある活火山に登る計画を立てるとき、どんな点に注意をしたらいいのかについて、火山学・地質学の専門家で、『日本の火山に登る 火山学者が教えるおもしろさ』(山と渓谷社・ヤマケイ新書,2020年)を上梓された及川輝樹先生に教えていただきます。
計画段階で確認しておくべきこと
【vol.01 現在日本にある火山と登山リスク編】で、「異常が観測されていない活火山で、登山中に噴火に遭遇する〝確率〟は、限りなく低い」ということを教えていただきました。 「登山者自身がリスクを下げる努力をした上で、火山が持つ大いなる魅力を楽しんでみては」とのアドバイスをいただきましたが、具体的に、準備段階でどのようなことをすればいいのでしょうか。 「登山を計画する場合、どんな山でも、その山のことを調べて、事前に情報を集めておくことは基本ですよね。その上で自分たちに合った計画を立て、出発前には最新の気象情報も確認するはずです。 計画を立てる際に、まずは対象の山が活火山かどうかを調べましょう。現在活動している火山であれば、気象庁のホームページで異常が起きてないかを確認します」(及川先生) このサイトでは、直近の1週間以内に発表された火山情報を見ることができます。個別の山の情報ページにリンクが張られていて、最新情報が確認できます。たとえば、火山性地震の回数や最近の変動、GNSS衛星による連続観測で山体膨張などが起きていないかも掲載されています。 何か変化があった場合、その都度火山活動の状況や、防災上の警戒事項等が発表されますが、ひと月ごとに出される定期発表では、噴気の高さ、地震の回数などの計時変化、震源の分布図や監視カメラによる画像も確認することができます。 「噴火警戒レベルが設定されている山に登る場合には、今どのレベルなのかも確認する必要があります。警戒レベルによっては、立ち入れない場所があるかもしれないからです。 また、登山中に火山活動が活発化して警戒レベルが引き上げられた場合、どの登山道に立ち入り規制が行われるのかもあらかじめ確認しておきましょう」と及川先生。 噴火警戒レベルとは、火山活動の状況に応じて「警戒が必要な範囲」「とるべき防災対応」を5段階に区分して発表する指標のこと。 常時監視火山のうち、十和田火山と硫黄島を除く48座で運用されています(2019年12月より)。各火山の噴火警戒レベルについては、気象庁ホームページの中の「各火山のリーフレット」にまとめてあります。 「火山の状況に関する解説情報」には、「臨時」とついているものとそうでないものがあります。現状では、噴火警戒レベルを引き上げる基準に達していないものの、引き上げる可能性がある場合などに「臨時」付きの解説情報が発表されるそうです。 最近の事例では、北アルプスの焼岳で火山性地震が多い状態が続いています。6月7日22時10分に『火山の状況に関する解説情報(臨時)』が発表され、その後も連日発表されています。 気象庁では、6月上旬に職員を現地に派遣し、山体の変形がないかを確認したり、火山ガスの温度を測定したりしています。特段の変化はみられなかったようですが、現地では焼岳小屋が営業開始を予定していた6月18日から29日に延期。登山口には地元自治体が登山を控えるように呼びかける看板を設置したりしています。 「『火山の状況に関する解説情報(臨時)』が出たときは、火口付近で噴火に遭遇する確率は静穏な時よりも高くなっています。そのことをよく考えて登るかどうか決めるべきで、よほどのことがなければ登らない方が良いと思います」と及川先生。