家屋倒壊が増えた原因? 1年前の“震度6強”…損傷しても改修できず 背景に大工不足【武居信介の防災学】
総務省消防庁のまとめによると、今年1月に起きた能登半島地震で全半壊した家屋はあわせて約2万8700棟におよび、およそ9割が能登半島など石川県での被害でした。(5月8日現在の消防庁まとめ) ▼地震から1日も休まず... “復興スーパー”支える家族 見えぬ先行き…進学を諦めた孫 注目すべき点は、1年ほど前に起きていた地震でも大きな被害を受けていたことです。昨年の5月5日に発生した能登半島沖地震では、珠洲市で震度6強を観測、石川県全体で3422棟の家屋で一部損壊以上の被害が発生していたのです。被害が大きかった珠洲市正院町などでは、去年5月の地震直後に行われた応急危険度判定の結果、立ち入りが危険な“黄色紙”や、原則として立ち入り禁止の赤紙が張られたままの家屋が、正月の能登半島地震の発生の直前でも多く残されていました。 そこに、最大震度7の大きな揺れが再び襲ってきたわけで、すでに被災して損傷を受けていた家屋の多くが倒壊する結果となりました。
◆被災家屋…1年経って改修進まず
被害が大きかった珠洲市・正院地区の区長、浜木満喜さんは次のように語ります。 「去年の地震の後に被害を受けた家を改修したくてもやってくれる大工さんがいないんです。大工さんも高齢化しているし、そもそも能登でも大工さんが少なくなっていて、改修を頼んでも請け負ってくれる若い人がいないんです」 「私はしかたなく、80歳を超える知人の大工さんに教えてもらいながら自分で自宅の補修をし、応急措置をしただけの家で暮らし続けていました。また高齢化が進んでいて、多くの人が家の改修をしたところで何年住み続けられるかわからず、多額のお金を投ずることに躊躇する人も多かったです」 応急修理をしただけの浜木さんの自宅は今回の地震で全壊。いまは夫婦で仮設住宅で生活しています。珠洲市の高齢化率は去年の段階で51%を超えていました。地域住民の高齢化が地震への備えを脆弱化させる結果にもつながっていたのです。
◆“日本の大工” 就労者は20年間で半数に…
総務省が5年ごとに行っている国勢調査によると、大工に就労している人数は2000年に約64万6800人いたのに対し、2020年には29万7900人と20年間で約半分に減少してしまっています。年齢構成を見ると60歳以上の割合が2020年の段階で43%と高齢化も顕著に進んでいます。 さらに、地震被害にあった家屋の被害状況をきちんと把握して修理していくにはかなり高度な技術と知識が必要ですが、最近の住宅建設は工場で生産した資材を現地で組み立てるだけの作業が増えていることから、こうした経験豊かな大工さんの人材も減ってきてしまっているといいます。