自転車で下校中に車と正面衝突「ヘルメットが身代わりに」…一命取り留めた高校生が着用訴える
昨年4月に改正道路交通法が施行され、自転車に乗る際はヘルメット着用が努力義務となった。しかし、髪形が崩れるためか、面倒なためか、高校生の着用率が低迷している。下校中に事故に遭い、ヘルメットのおかげで一命を取り留めた茨城県南地区の男子高校生は、「ヘルメットは必需品です」と着用の大切さを訴える。(伊能新之介)
「もしもヘルメットを被っていなかったら、今頃どうなっていたか」。男子高校生は傷だらけになったヘルメットを見ながらそう振り返る。
4月下旬の夜、下校のため、道路の左端を自転車で走行していた。緩やかなカーブにさしかかった時のこと。対向の乗用車が真っすぐに自分の方に向かってきたのだ。
「やばい」と思った瞬間、もう正面衝突していた。体は投げ出され、アスファルトにたたきつけられた。意識はあったが、額からの出血や両脚の痛みに気づき、不用意に動かないように救急車を待った。幸いなことに頭も脚も軽傷で済んだ。
治療後、かぶっていたヘルメットの後頭部右側に多数の傷が付いていることに気が付いた。「ヘルメットが身代わりになってくれたんだ。もし直接頭に衝撃を受けていたら……」。今でも恐怖を覚えるという。
男子高校生が着用し始めたきっかけは、昨年4月に始まった自転車用ヘルメット着用の努力義務化だった。学校から促され、安全面を考慮して購入した。それからは30分ほどかかる通学路を必ずヘルメットを着用して走っていた。
事故後は、不安でしばらく自転車に乗ることができず、家族に送迎してもらっていたが、3か月後、勇気を出して自転車通学を再開した。男子高校生は「多少怖がっていたほうが安全だと思う」と話す。黒色だったヘルメットは、夜間でも見えやすい白色に替えた。
友人たちにヘルメットについて聞くと、「髪形が崩れる」「面倒くさい」といった答えが返ってくる。学校は新入生の制服販売時に一緒にヘルメットの購入を促しているが、あくまで努力義務にとどまっている。