カワサキ“ダブサン”は不思議なバランスがイイ!!! 再考したい650-RSの魅力とは?
1970年~1980年代に発売された国産旧車が、“絶版旧車”と呼ばれ人気だ。当時憧れていた世代はもちろんのこと、今どきのヤングライダーたちも“カッコいい!”と、注目する絶版旧車の魅力を、バイク好きの俳優・大野拓朗と元バイク雑誌編集長・カワニシが語り合う。今回は小説『彼のオートバイ、彼女の島』(片岡義男)に描かれたことでも知られるカワサキ“ダブサン”こと「650-RS」に試乗! 【写真を見る】極上のカワサキ650-RS W3の詳細(20枚)
映画に登場した『彼のオートバイ』
河西啓介(以下、カワニシ):最近、若い世代に1970~1980年代の“懐メロ”が流行っているそうだけど、『スローなブギにしてくれ』は、知っている? 1981年に同名の映画の主題歌として、シンガーソングライターの南佳孝が歌って大ヒットさせた曲。 大野拓朗(以下、大野):その『スローなブギにしてくれ』と、今回試乗するバイクに何か関係が? カワニシ:『スローなブギにしてくれ』は、作家・片岡義男の小説を角川書店が映画化したのだけど、今回試乗するカワサキ650-RSは、やはり片岡義男の小説を原作に1986年に角川映画として公開された『彼のオートバイ、彼女の島』で主人公のコオが乗っていたバイクなんです。 大野:あぁ、その映画タイトルは聞いたことがあります。僕が生まれる前の映画だけど、タイトルに“オートバイ”って入っているから印象に残っているんですよね。 カワニシ:僕たち世代にとっては小説ともども大いに影響を受けた作品。“カワサキ”のバイクに憧れたのもこれがきっかけだったかな。そしてじつは数年前、自分の愛車としてこの650-RSを購入してしまったという……。 大野:ついに憧れのバイクを手に入れたんですね! カワニシさんをそこまで魅了したバイクを試乗するのが楽しみですね!
“ゼッツー”ととも登場した“ダブサン”
カワニシ:おお、これは程度の良さそうなダブサンだなあ。 大野:車名は「650-RS」ですよね。なぜW3(ダブサン)って呼ばれているんですか? カワニシ:W3のオリジンは1960年に目黒製作所が発売した「メグロK1」、その数年後にメグロがカワサキに吸収合併されて「カワサキ500メグロK2」(1965)となった。それからカワサキ・ブランドのもとで「W1」(1966)→「W1SA」(1971)とモデルチェンジして、シリーズの最終型として1973年に登場したのがこの「W3」です。ただし1973年にカワサキの商品ラインナップが一新され、400-RS、750-RS(いわゆるZ2)と併せて3台が“RS(ロードスター)シリーズ”として発表されたので、車名は「650-RS W3」となったんです。その後、呼び方は「ダブサン」または「ダブルスリー」が定着しましたね。 大野:なるほど。絶版車界で絶大な人気を誇るあの“ゼッツー(Z2)”と同期なんですね。 カワニシ:そうそう。アメリカで大ヒットした「Z1」の国内版として、750cc並列4気筒DOHCエンジンを積んで登場した高性能なゼッツーに比べ、ダブサンは1960年代初頭のメグロK1からの流れを汲む直列2気筒OHVエンジンを積んだ、発売当時から“ちょっと古い”印象のモデルだったんです。 大野:1970年代といえば、日本のバイクがどんどん高性能化して、世界を席巻していった時期ですよね。カワサキもきっと過渡期だったんでしょうね。 カワニシ:たしかにこの頃から大型バイクは4気筒エンジンが主流になり、W3も1973年から1974年のわずか2年で生産中止になったんです。じゃあ、さっそく試乗してみましょう!