日本と比べてかなりの違い…米国のとてつもない遺産税控除額、2002年100万ドル→2024年1,361万ドルに、トランプ政権で急拡大
2010年以降の遺産税の動向
米国の相続税の特徴は、遺産税と贈与税の統合移転税制ですが、この形態になったのは1976年の改正です。 そして、2001年1月に大統領に就任したブッシュ大統領は、就任当時下降気味の景気を刺激するために減税を柱とする税法の改正法案を米国議会に提出して成立させました(Economic Growth and Tax Relief Reconciliation Act of 2001:以下「ブッシュ減税法」)。このブッシュ減税法が注目を集めた点の1つは、2010年までに米国が遺産税を暫時縮小して、2010年の1年限り課税を停止することを決定したことです。 米国の遺産税は、2002年には最高税率が50%あったものが、2009年に45%に引き下げられました。また遺産税の生涯控除額は、2002年と2003年が100万ドル、2004年と2005年が150万ドル、2006年から2008年までが200万ドル、2009年が350万ドル(統合税額換算額145万5,800ドル)と段階的に増額されました。そして、2010年の1年間に限り、遺産税とGST(世代跳躍移転税)は課税がなくなる予定でした。
トランプ政権で控除額が急拡大
遺産税制は2011年1月以降はブッシュ減税法施行前の従来の遺産税法に戻ることになっていたところ、2008年に発足した民主党のオバマ政権は2011年以降の遺産税を最高税率35%、基礎控除額を500万ドルに固定する恒久的な改正遺産税制法を成立させました。 2013年以降については2012年米国納税者救済法により、生涯控除額(基礎控除額)500万ドル、最高税率40%で推移しました。 その後、当時のトランプ大統領による2017年の税制改革法により、2018年1月以降は2025年までの時限措置として、生涯控除額が2倍の1,000万ドルに拡大され、さらに毎年インフレ調整されて、2019年1,140万ドル、2020年1,158万ドル、2021年1,170万ドル、2022年1,206万ドル、2024年1,361万ドルとなっています。 米国の基礎控除額は、税額に換算されて、遺産税の税額控除として計算されます。富裕層の支持者の多い共和党のブッシュ、トランプ大統領が、遺産税減税の法改正をするのは理解できますが、反対政党の民主党のオバマ大統領が、この流れを変える法改正を行っていません。バイデン大統領は、控除額を350万ドルに引き下げて45%の相続税が課せられることになる提案があるといわれていましたが、実現していません。 この背景としては、海外の富裕層を米国に誘致する政策なのか、その他に何か政策上の意図があるのかは不明です。IRSによる2030年までの遺産税の申告書数の予測値を見ても、今後、米国では遺産税の増税は予測されていないということがいえます。 矢内一好 国際課税研究所首席研究員
矢内 一好
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