コリア国際学園、K-POPを学べるコースは生徒の大半が日本人 韓国への憎悪感情が先鋭化しても、経済や文化交流は進む
生徒たちは放課後、午後8時までダンスの練習をこなす。そこには、さながらオーディション会場のような熱気が漂っていた。 ▽向けられた直接的な暴力、深夜に校舎が炎上 校長の李相創が異変に気付いたのは、2022年4月5日朝に出勤した時だった。校舎1階のエントランスホールにくすぶっている段ボールを見つけ、消防に通報した。校内の防犯カメラには同日午前2時ごろ、炎が上がって明るくなる様子が写っていた。「ただ驚きしかなかった」。李は、そう振り返る。 6月、30歳の無職の男が建造物損壊などの容疑で大阪府警に逮捕された。男は公判でこう証言した。「(在日コリアンを)野放しにすると日本人が危険にさらされると思っていた」。犯行の動機については「嫌がらせ」をすれば「日本から去って行くと思った」と述べている。 それまでにも、学校に電話をかけてきた男性が「国へ帰れ」との言葉を投げ付けてきたり、校舎の壁に「コリア」といたずら書きをされたりしたことはあった。だが、直接的な暴力を向けられたのは初めてだった。
近所に設置されていた防犯カメラには、学校を見ながら歩いていく犯行直前の男の姿が写っていた。「今まで感じたことのない、不気味な恐怖を感じた」。映像を目にした事務長の金玉伊は、表情を曇らせた。 ▽ネット上にあふれる差別の言葉、憎悪感情が先鋭化 なぜ韓国に向けた憎悪も根強くあるのか。差別問題に詳しい弁護士の師岡康子はこう指摘する。「歴史問題などであおられている韓国政府に対する反感が、コリアン全体への差別や偏見に結び付いている」 2021年7月、在日本大韓民国民団(民団)愛知県本部が放火され、8月には在日コリアンが多く住む京都府宇治市の「ウトロ地区」でも民家に火が付けられた。ウトロ地区を長年取材するジャーナリスト、中村一成は懸念を深めている。「インターネット上にあふれる差別の言葉によって、憎悪感情が先鋭化していく可能性がある」 2022年11月、KIS理事長の金淳次は、大阪地裁の法廷で意見陳述書を読み上げる際、被告となった男の名前に「君」を付けて呼びかけた。「何が短絡的な行動に駆り立てたのか。彼の心の内を知りたかった」。男は無表情で金を見つめていたという。