『ギークス』に漂っていた“安心感” 松岡茉優たちが教えてくれた人間関係を豊かにする秘訣
『ギークス』が伝えてきた「無理にわかりあわなくてもいい」というメッセージ
翌日、ネット上に新たな爆破予告が出現。夕方の犯行予告に、場所は不明と記されていた。動揺する芹沢のもとに、西条、吉良、基山が駆けつける。そして、署に呼び出されたのは大学院生の今野だ。 盗まれていたのは警備員の指紋だった。犯人はそれを利用してセキュリティを突破し、オランウータンの偽の足跡まで残していた巧妙な手口が明らかになる。追及される今野は犯行を認めるも、爆弾の場所については沈黙を貫く。森教授への崇拝と、その挫折への怒りが犯行の動機だった。 いよいよ最終回を迎えた『ギークス~警察署の変人たち~』。事件解決後、いつもの居酒屋で、変わらぬ会話を交わす3人ののんびりとした日々は、これからも続いていく。しかし私たちは、この温かな木曜の夜の風景をもう見られないと思うと、胸に何とも言えない寂しさが残る。 本作は、好奇心旺盛で、卓越した知識や技術を持ちながら、それぞれ異なる形で人間関係に苦手意識を抱く3人をポップに描きつつ、その根底では「無理にわかりあわなくてもいい」という静かなメッセージを伝えていたように思う。 例えば、基山の一人暮らし決意に見られるように、家族の問題を全て背負わずとも、各々が自立することで互いを支え合う道もある。西条が父親のことで行き詰まった時には、安達がそっとヒントをくれた。吉良と馬場園市長(ウエンツ瑛士)の関係性の変化もそうだ。無理に分かり合えなくても、ありのままの自分でいても、誰かがほんの少し寄り添ってくれる。そんなゆるっとした安心感が、本作には終始漂っていたように思う。 そしてそれは、本作を作り上げた演者やスタッフの中にも流れていた空気なのかもしれない。クランクアップを迎えた松岡茉優は「この現場の一番好きなところは、会社で言うところの上司部下にあたる人たちが、その垣根を越えてフラットに接しているところでした。各部が各部に敬意を持っているから、学校のような青春感が保たれていたのかなと思います」とコメントを残していた。(※) 互いに敬意を持ちつつも、飾らずに接するという姿勢。それこそが、“ギーク”な3人が教えてくれた、人間関係をほんの少し豊かにする秘訣なのだろう。井戸端会議とまでは言わずとも、ちょっとした雑談ができる誰かがいる日常。そんな自分の周りにある小さな幸せに、改めて気付かされた気がした。 参照 ※ https://realsound.jp/movie/2024/09/post-1784223.html
すなくじら