恋愛、治療薬、運動会もNG――宗教2世の漫画家が語った「生きづらさ」と「銃撃事件」
銃撃事件のあとの恐怖感
──今回、宗教2世が注目されるきっかけは、山上徹也容疑者(41)が引き起こした事件でした。宗教2世はあの事件をどう受け止めたのでしょうか。 「最初に動機や背景を知ったときは、宗教2世がみんな彼みたいに思われたらどうしよう、という恐怖感がありました。家庭や人生での恨みを抱えている人はたくさんいると思いますが、他害行為が宗教2世の類型とは言えません。むしろ多いのは、他者ではなく自身への攻撃でしょう。自分を傷つけたり、心を病んだり……。自分が選択したものではない宗教で、自分の人生が意にそぐわない方向に行ってしまった。それこそが宗教2世の悩みなんです」 ──事件から日が経つなかで、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の2世の当事者が語る報道も増えました。 「いろんな報道が増えたことにはすごく感謝しています。まったく関心がなかった人も、宗教2世への理解を深めてくれるようになった。ただ、宗教2世の問題は旧統一教会だけじゃなく、いろんな宗教にあるんですね。仏教系のところなどでは、信者数が何百万人という団体もある。信者数が多いということは、宗教2世の被害者も多いということです。なので、旧統一教会だけで終わってほしくないなという思いがありますね」
ある宗教団体の抗議と公開中止
菊池さんの宗教2世のウェブ連載は一定の人気を得ていたが、今年2月、思わぬ展開になった。ある宗教団体を取り上げたところ、その団体から抗議が寄せられ、集英社は急遽公開を中止してしまったのだ。まもなく文藝春秋が作品を引き取り、10月6日にコミック化されることになったが、公開中止の際はネット界隈で波紋を呼んだ。 ──どんな経緯だったのでしょうか。 「連載第5話でしたが、ウェブに公開されて2、3日後に集英社にその団体から連絡がありました。担当編集者が電話をとると、わーっといろんなことを言われ、その後、抗議の文書が集英社あてに送られてきたようです。そのあと社内で協議があって、公開中止という判断になったということでした」 ──菊池さんに連絡は? 「ことあるごとにありました。どういう連絡があり、どう対応して、ウェブにこういうお詫びの文章を載せますと。私としては続けたいという思いがありましたし、担当編集者さんも続けようと模索していただいているようでした。それは味方になってくれているようで、うれしかったです。でも、会社の判断で難しいとなった。そうなると私が何を言っても覆りませんから、その決断はやっぱり残念でしたね……」