市民の「喫煙所の増設」求める声は無視? 横浜市の全公園"完全禁煙化"はアリなのか
そもそも今の日本の健康増進政策は、一方的な「禁煙化」ではなく、「分煙化」の推進に向かっている。 総務省も各自治体に向けた「地方たばこ税の安定的な確保と望まない受動喫煙対策の推進のための分煙施設の整備促進について」(今年4月1日付)という通知の中で、「駅前・商店街・公園などの場所において、地方団体だけでなく民間事業者等によるものも含めて分煙施設の整備を進めていくことが有効である」としている。横浜市の「公園の全面禁煙化」は、総務省の指摘と逆行しているように見える。 実際、大阪・関西万博の開幕を間近に控え、「喫煙所不足」が指摘されている大阪市では、むしろ公園に喫煙所を新設しているように、分煙施設の増設は全国的な課題となっており、横浜市でも「喫煙所が足りない」と嘆く市民は多い。 横浜駅西口付近の喫煙所にいた40代男性がこう話す。 「この喫煙所はいつも人が多すぎます。駅の周辺に喫煙所が少ないから人が殺到するんですよ。これで公園まで禁煙になるなら、もっと喫煙所を増やしてほしいですね」 また、観光客で連日にぎわう元町・中華街では、ある店舗の喫煙ブースにいた30代男性が、こう語ってくれた。 「以前はいろんな店の前に灰皿がありましたが、最近は軒並み撤去されました。今の中華街は喫煙所がないに等しい。喫煙可能な喫茶店はいつも混んでいるし、路上喫煙も前より増えた気がします」 こうした指摘について、横浜市はどう対応していくつもりなのか。市の公園緑地管理課の担当者はこう話す。 「今回の条例は子供が安心安全に過ごせるように、望まない受動喫煙をなくしていくのを目的としたものです。そのため、喫煙所不足のご指摘は真摯に受け止めますが、誰もが利用可能な公園内に関しては、今後も喫煙所の設置は予定しておりません」 条例が施行されると、公園内の喫煙に5万円以下の過料も科せられる。それはどのように取り締まるのか。 「喫煙者が多く目撃される公園を重点的に見回っていく予定です。ただ、喫煙を発見したら即過料処分というわけではありません。まずは口頭で注意を促して、公園が禁煙となったことの周知に努めていきます」 横浜市内の公園では大勢の人が訪れる大規模イベントが行なわれることも多いが、これだけ厳しく禁煙化を進めているにもかかわらず、その際には「仮設の喫煙所を設けることも検討する」そうだ。 それならば、いきなり禁煙化を進める前に、喫煙所の増設が先では......という声が出るのも当然だろう。来年4月の条例施行に向け、今後の横浜市の対応に注目だ。 取材・文・撮影/小山田裕哉