元裁判長「救済の遅れ」を懸念 問われる再審のあり方【袴田事件再審公判・結審】
静岡放送
袴田さんの再審=やり直し裁判は、すべての審理が終わりましたが、そもそも裁判のやり直しが認められるまでには、事件発生から57年もの月日が費やされました。これほどまでに時間がかかる原因として指摘されるのが再審制度の不備です。 【写真を見る】元裁判長「救済の遅れ」を懸念 問われる再審のあり方【袴田事件再審公判・結審】 再審制度の問題点とされている一つが「検察側の抗告」です。検察が裁判所の決定に不服を申し立てて抗告すると地裁での審理は高裁に、高裁での審理は最高裁に移ることになります。 袴田さんの再審は2014年に一度認められましたが、検察の抗告を受けた東京高裁が地裁の再審開始決定を取り消した経緯があります。抗告の権利は弁護側、検察側ともに与えられていますが「検察側の抗告」は無実の罪を着せられた冤罪被害者の救済を遅らせると批判が上がっているのです。 当時、静岡地裁の裁判長として袴田さんに再審開始決定を出した村山浩昭さんです。 <元静岡地裁裁判長 村山浩昭弁護士> 「抗告した分、時間が遅れて救済が遅れる。再審の場合はですね、現に受刑してるとか、犯罪者ということで見られてるという状態が続くわけですから、冤罪被害を拡大してるんですよね。検察官としては、どうしてもそういう制度がある以上は抗告をするという趣になるんでしょうから、これはもう制度の問題として禁止なきゃいけないと思います」 最終的に再審開始が確定したのは、村山さんが出した再審開始決定から9年が経った2023年でした。 再審制度の不備として指摘されるもう一つの点が「証拠開示のハードルの高さ」です。裁判のやり直しの可否を争う審理において、証拠の開示に法的な義務はなく、弁護側が請求しても有罪を維持したい検察は応じず、年月ばかりが経過します。 袴田事件の場合、静岡地裁が検察に勧告したことで40年以上も伏せられてきた多くの証拠が開示され、再審開始の決定につながりました。 <元静岡地裁裁判長 村山浩昭弁護士> 「過去の再審無罪事例を見ますと、証拠開示によって、それまで裁判所の前に出てきていない古い証拠、これが出てくることによって、そういう無罪方向の証拠があったんだということが再評価されて、無罪になるという例が非常に多いんですね」 弁護側が求める証拠が表舞台に出てくるかどうかが、検察と裁判所のみにゆだねられているため、再審の審理は不公平で時間がかかるという指摘が上がっています。