省エネは地域づくりと人口増につながる――ドイツの事例紹介
省エネは、子供や人口が増える地域づくりにつながる――。9日、長野市で開いたセミナーで省エネ事業などの専門家が「省エネは単なる節約ではなく、新たな街づくり、村づくりのきっかけになる」とドイツの実例を紹介、参加者の関心を集めました。それぞれの家庭の省エネがその地域に億単位の地域づくりの資金を生み出し、人口増にもつながると説明。模索が続く日本の対策に一石を投じる提言となりそうです。
セミナーは冬の省エネ作戦の一環として長野県が開いた「節電・省エネ対策セミナー」で、省エネ事業のノウハウ提供やセミナーを行っている株式会社日本エネルギー機関の中谷哲郎代表取締役はじめ経産省、省エネ企業の担当者らが講演。県内自治体職員や市民、建設業の関係者ら約100人が参加しました。 中谷氏は「ドイツでは“エネルギーはお金である”と考えられており、エネルギーのロスをなくしてお金を生み出すために住宅の省エネ化が促進されている」と説明。また、ドイツやEU諸国は住宅の1年間のエネルギーの妥当なランニングコストを提出しないと建築確認申請が下りないので、住宅の省エネは必須。人口約8000万人のドイツで毎年15~20万戸の住宅の新築があるが、省エネの改築が増え「2000年には改築が新築を上回った」。 新築が中心の日本と比べドイツは改築が大きな市場になり、この結果従業員が1~19人の零細建築店が生き残るという大きな経済効果を生み出したと、省エネ住宅の普及とその波及効果を指摘しました。「省エネのための改修が経済を下支えしている」。 「省エネ住宅の拡大で、原油など輸入エネルギーに払う膨大な費用を減らし、その分を自分たちの地域に還元しようというのがドイツの考え方」と中谷氏。例えばある地域で年間30億円のエネルギー支出があれば、その3分の2は輸入代金となり海外に出てしまう。省エネ住宅などの工夫でエネルギーの浪費を減らせば、逆に3分の2の20億円を自分たちの地域で使うことができる――という考え方だと言います。 この場合、家庭の一戸、一戸の省エネの積み重ねが極めて大きく、億円単位の「省エネ」マネーを生み出す、と中谷氏。日本の場合、全国の家庭で年間700~800キロワット時の電力を必要とした10数年前の電気冷蔵庫を同400キロワット時の最新型に変えるだけで原発1.2基分の電力が節約できることからも理解できることだと説明しました。