省エネは地域づくりと人口増につながる――ドイツの事例紹介
同様にドイツの省エネ住宅は相当の外気温の低下があっても室温の低下にそれほど響かず、暖房費の大幅な節約になり、その分が住民の手元に戻る。「例えば長野県の80万世帯が暖房を切れば30億円以上のお金が県民の手元に残る計算になる。それと同じことです」。 中谷氏は、そのようにして住民の手元に生まれたお金で地域を変えた例としてベルリンの北にあるポツダム市(人口20万人)の大型団地「ドレビッツ」(住民5500人)の取り組みを紹介。同団地は老朽化して市民のお荷物的な存在でしたが、住宅を改修して省エネ化。約70平方メートルの各戸はそれまで年間約22万円の光熱費を払っていましたが、改修により冷暖房の効率が飛躍的に向上。年間の光熱費はほぼ半額の10万円ほどまでに減りました。公営、私営の住宅が混合する同団地ではこうして生まれた財源も生かして街づくりに。 まず団地の建物の間にあった殺風景な駐車場を公園に変え、学校は快適な建物に改修。ガラス張りの本格的な音楽室にはポツダムの交響楽団が定期的に練習に来るようになり「子どもたちを喜ばせるとともに誇りも持たせた」。大人たちも、見違えるようになった団地に笑顔が戻り、人口も増加。「子どもの数も増えていったのです。もう市民のお荷物の団地ではなくなりました」。
中谷氏は「省エネは、その成果で笑顔で暮らせて子どもが戻ってくる地域をつくり、未来の子どものために取り組むもの。それがドイツ人の最終目標なんです」と説明。「持続可能な街をつくるために、日本でもこうした試みを活用してほしい」と呼び掛けました。 この日は経産省の担当者が672億円余の新年度予算案の省エネ促進支援補助金や、年間のエネルギー消費量がおおむねゼロ以下になるネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の加速事業への予算案額100億円などについて説明。省エネ事業を促進する方針を示しました。 また建築業界からは、窓などの開口部のアルミサッシやガラスから外に放出されてしまう熱を樹脂サッシで防ぐ対策などが紹介されました。
----------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説