一生に一度は行きたい! ドイツの世界遺産「ヴァルトブルク城」の中世クリスマスマーケット
中世を体験できるレストラン
このレストラン「Luther House」がとてもユニークで忘れられない体験となった。店内に足をふみいれるとそこは中世の世界。キャンドルのほのかな灯りのなかに騎士の鎧や古い調度品が浮かび上がり、妖しげな雰囲気が漂っている。中世はこんな暗がりのなかで食事をしていたのだろうか。暗すぎてメニューも読めないほどだったが、スマホのライトで何とか解読しておすすめ料理を注文。 用意された中世風の白いエプロンの様なものを身につけて待っていると、鉄の串に刺さった豪快な肉料理が登場。この後のデザートは串刺しにされたフルーツが炎で包まれた状態で出てくるという演出に驚かされた。中世風の食事を堪能し、ヴァルトブルクの中世マーケットへの期待がますます高まってくる。
大人におすすめしたい、ヴァルトブルク城のクリスマスマーケット
そして週末。いよいよ今回の旅のハイライトとなるヴァルトブルク城のクリスマスマーケットへ。バスで城のふもとまで行けるので比較的楽にアクセスできるのだが、この日は生憎冷たい雨が降っており、坂をのぼるのが少々きつかった。 城の門をくぐって中庭に出ると、悪天候にも関わらず想像以上に混雑していて驚いた。天気が良い日は2倍の人出だというから動くのも大変そうだ。天気が悪くて逆に良かったのかもしれないと前向きにとらえ、中世マーケットの探検を始める。 このクリスマスマーケットにはきらびやかな装飾や電飾は無く、昔風の素朴な屋台では蜂蜜のお酒「メット」や手作りのロウソク、工芸品など通常のクリスマスマーケットにはない珍しいものが売られている。歩いていると中世の騎士(に扮した人)に出くわしたり、道化師によるショーが行われていたりと、中世の世界そのものでワクワクが止まらない。 ここで食べたいのはやはり名物のテューリンガーソーセージ。長蛇の列に並んで手に入れた焼きソーセージは肉肉しくジューシーで絶品だった。前回ここへ来た時も食べたはずなのに何倍もおいしかったのは、クリスマスの雰囲気と天気のせいもあったかもしれない。寒ければ寒いほど、グリューワイン(スパイス入りのホットワイン)も心身にしみておいしく感じる。 いよいよ雨風がひどくなってきたので城の中に避難すると、ワーグナーの有名なオペラ『タンホイザー』の舞台となった歴史的な歌合戦が行われていた大広間でクリスマス・コンサートの真っ最中だった。世界遺産に登録されているヴァルトブルク城は、この広間の他にもマルティン・ルターが籠って11週間で新約聖書を翻訳するという偉業を成し遂げた部屋や、この城に輿入れし壮絶な人生を歩んだ聖エリザベートの間など見ごたえたっぷりなので、ゆっくり時間をとって見学してほしい。 知的好奇心も満たされるヴァルトブルク城のクリスマスマーケットは、まさに大人のためのテーマパークだった。一年に6回しか開催日がないけれど、マニアックな旅がしたい人には、アイゼナハ観光とともにぜひおすすめしたい。きっと忘れられない思い出になるはずだ。 【2024年のクリスマスマーケット開催期間】 アイゼナハ:11月25日~12月22日 ヴァルトブルク城:11月30日~12月15日の土日 ところで、以前の記事で紹介したヴァルトブルク城のホテルは惜しまれながら閉鎖してしまったため、今回はアイゼナハの中心にあるホテル「VIENNA HOUSE」に数日滞在したのだけれど、客室が広くバスタブ付き(※欧州ではシャワーのみのホテルが多い)で快適だったことを記しておきたい。部屋の清掃が必要無ければドアノブに小袋をかけておくという、環境問題への取り組みも気に入った。もともと部屋の掃除は毎日してもらわなくてもいいのになと思っていたし、むしろ無いほうが入室を気にせず気楽に過ごせて、部屋に戻ると小袋の中にチョコレートが入っているのがちょっとした楽しみだった。 文・写真/坪井由美子 ライター&リポーター。ドイツ在住10数年を経て、世界各地でプチ移住や語学留学をしながら現地のライフスタイルや文化、グルメについて様々なメディアで発信中。著書『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。
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