ロシアに戻る出国者、戦時経済を押し上げ-プーチン氏は宣伝に利用
政治コンサルタント会社Rポリティク創業者でカーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのシニアフェロー、タチアナ・スタノワヤ氏は、西側の「ロシア嫌い」を裏付けるプロパガンダに帰国の話が積極的に利用されていると指摘。プーチン氏にとっては「自身を盛り立て、自分が正しいという証拠を強める材料」であるため、この問題は重視されているとの見解を示した。
数千人の帰国者はロシアが戦争による制裁を乗り越え、堅調な経済成長を果たす助けにもなっている。ブルームバーグ・エコノミクスの試算によると、ロシアの国内総生産(GDP)は昨年3.6%増加したが、移民の逆流が0.2-0.3ポイント程度押し上げた公算が大きい。
ただ、帰国者は推定で雇用者数全体の0.3%を占めるに過ぎない。ひっ迫する人手不足の緩和にはほど遠いものの、経済活動への寄与は人数の割に並外れて大きい。
ロシアは人材難に陥った専門職を呼び戻そうとしているため、戦争開始前よりも好待遇の仕事を本国で見つけられる人もいる。ITプログラマーのエフゲニーさんはカザフスタンのアルマトイで1年過ごしたが、「以前なら夢でもかなわない」給料と条件を提示され、帰国することにしたという。
ロシア人の帰国の流れは続く公算が大きい。イタリア・フィレンツェにある欧州大学院(EUI)の政治学者、エミル・カマロフ氏とイベッタ・セレゲーエワ氏を中心とする調査によると、移住先での地位が安定している、またはやや安定していると回答したロシア人移民は41%に過ぎず、一部の国ではこの割合が16%でしかなかった。25%は現地の市民や機関から差別を受けた経験があると報告し、不安に拍車をかけている。
ロシア人移民を調査するソーシャル・フォーサイト・グループの社会学者、アンナ・クレショワ氏は、移民らは「世界が文字通り反ロシアで結集している」と感じ、「『結局のところプーチンはそれほど間違っていなかった。われわれは本当に嫌われている』との感覚と恨みを持ってロシアに帰ってくる」と分析した。