【高校野球ベストシーン’23・岡山編】スキのない走塁で逆転劇、岡山勢11年ぶりの8強を勝ち取ったおかやま山陽ナイン
2023年もあとわずか。ことしも高校球界ではさまざまな印象的な出来事があった。各都道府県ごとにベストシーンを思い出してみよう。 2回戦・おかやま山陽と大垣日大のスタメン 【夏選手権甲子園大会2回戦・おかやま山陽vs.大垣日大】 延長10回タイブレークは、さまざまなドラマを生む。岡山代表として夏甲子園に出場したおかやま山陽は、大垣日大(岐阜)相手に延長10回逆転サヨナラ勝ちを収めた。快音が響いた適時打ではなく、バッテリーミスによる2点ではあったが、相手のミスだけでは逆転することはできなかった。 10回表に1点を奪われて迎えたその裏、2死満塁のシーン。相手投手の暴投で三塁走者が返ったが、捕手から投手への送球がそれる間に二塁走者の山崎 徠夢外野手(3年)が一気にホームイン。ミスにミスが重なった結末といえばそれまでだが、山崎の「好判断」がなければ勝利はなかった。山崎は、捕手が後逸して三塁へ向かうときから、この結末に備えていたのかもしれない。「送球が乱れたのを見て慌てて本塁へ」ではなく「もしそうなったら突っ込む」。その準備がなければ生まれない得点だった。「相手ミスで勝った」のではなく、ミスからくるチャンスを見逃さなかった、おかやま山陽ナインの勝利だった。 岡山大会でも「逆転劇」を繰り返していた。初戦の倉敷戦では0対2で迎えた7回に一気に3得点するなどの逆転勝利。決勝でも、倉敷商を相手に1対2から終盤に試合をひっくり返して優勝を手にしている。リードを奪われても慌てることなく、自分たちの野球を貫いた。その結果、6年ぶり2度目の優勝を手にすることができた。 おかやま山陽は甲子園でその後、3回戦も突破。日大山形(山形)大垣日大、日大三(西東京)を撃破し、「日大キラー」とも呼ばれた。おかやま山陽としては、この夏甲子園初勝利を含めた3勝で、初のベスト8にも輝いた。岡山勢としては、2012年にベスト8に入った倉敷商以来、11年ぶりのことだった。相手のスキを見逃さない。逆転劇を身につけたナインの集大成だった。