【毎日書評】「クイックルワイパー」のヒットに学ぶ、マーケティング的発想
「掃除機」の事例
ここで著者は、身近な例として「掃除機」に関する問いを読者に投げかけています。いうまでもなく、「掃除機のニーズはなんなのか」ということです。おそらく多くの方は、「部屋をきれいにすること」と答えるのではないでしょうか。その点を踏まえたうえで、著者はさらにひとつの質問をしています。 1994年に日本で発売され、6年後の2000年には世帯普及率が45%と爆発的にヒットした、掃除機と同じニーズを満たす商品があります。さて、何でしょうか?(18ページより) もしかしたら、ロボット掃除機の「ルンバ」を思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ルンバは2002年発売なので不正解。では、正解は?(17ページより)
事例:クイックルワイパー
答えは「クイックルワイパー」です。立った状態のままで床の雑巾がけができる優れものの掃除道具です。この商品は電機メーカーではなく、日用品メーカーの花王が販売しています。 多くの電機メーカーが掃除機の吸引力向上や騒音抑制といったハードウェアのスペック向上に血道を上げている市場において、顧客ニーズを深掘りした花王が見事に成功した事例といえるでしょう。(18ページより) 私たちはひとたび製品やサービスをつくってしまうと、どうしてもそれにとらわれてしまうもの。そのため、顧客ニーズを満たすことよりも、自分たちがつくった商品やサービスを売ることに力を入れてしまいがちであるわけです。 たとえば石油会社は、エネルギーというニーズではなくガソリンという商品にこだわるでしょう。鉄道会社は輸送というニーズではなく、鉄道というサービスにこだわるかもしれません。それらに莫大な投資をしてノウハウを培ってきたわけですから、ある意味では当然だといえそうです。 とはいえ、そういった企業側の事情など、顧客にとってなんの関係もないこと。だからこそ顧客は、自分のニーズにマッチした解決策が登場すれば、あっという間にそちらへ移ってしまうのです。 そのいい例が「クイックルワイパー」だということですが、いうまでもなくこれはすべての商品やサービスにあてはまります。したがって、その点を見逃さないことが、マーケティングにおいては非常に重要な意味を持つわけです。(18ページより) 本書のもとになっているのは、Udemyという動画配信プラットフォームで「はじめてのマーケティング」と題して配信された動画講義。 書籍化にあたっては講義では紹介されていない最新の事例や、講義で語り切れなかった補足説明などが盛り込まれているそうです。つまり、よりパワーアップした内容になっているということ。したがって、マーケティングのポイントをしっかり押さえるためには有効な一冊だといえるでしょう。 >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: フォレスト出版
印南敦史