【毎日書評】「クイックルワイパー」のヒットに学ぶ、マーケティング的発想
マーケティングは、ビジネスシーンにおいて多大な影響力を持つ概念。にもかかわらず、その扱われ方や解釈の仕方はどこか曖昧で漠然としていることも否定できません。事実、「結局、マーケティングってなんなのだろう?」という疑問を解消できない方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そこでご紹介したいのが、『マーケティングの大事なところを3時間で学ぶ』(丹羽亮介 著、フォレスト出版)です。 本書のコンセプトは、ビジネスパーソンの皆さんにマーケティングの全体像を体系的に理解していただき、「自社(自分)が何ができていて何ができていないのか」をわかるようになっていただくことです。(「はじめに」より) そのため学術的な解説を避け、仕事で実践的に応用できることを意識しているそう。あえてテクニカルな説明はせず、マーケティングの骨子をシンプルに理解できるようにとの配慮がなされているわけです。 骨組みだからこそ、それだけを押さえることでいかに大きな成果をあげられるのかを事例をもって説明していきます。正確な概念の説明よりも、実践的な活用、あるいは皆さんの会社での応用、事例から得られるインスピレーションを重視して構成しているので、すでに世に出回っているアカデミックな教科書とも、個別スキルのハウツー本とも異なります。(「はじめに」より) 事例に示されている考え方は、時を経ても変わることのない普遍的なもの。そのため本書を参考にしながらビジネスに取り組んでいけば、最短の時間でマーケティングの核心をつかめるように事例を活用しながらなるのだといいます。 そんな本書のなかから、きょうはもっとも基本的かつ重要な部分を押さえた第1章「マーケティングとは何か?──顧客視点での価値創造」のなかから「マーケティングと顧客視点」に焦点を当ててみたいと思います。
ニーズとウォンツから考える「マーケティング的発想」
「マーケティング」ということばのもとになっている「market」という動詞は、「商品を市場に出す」という意味。つまり「商品を売ること」、あるいは「市場で売れるような宣伝をすること」という意味で使われているわけです。しかし、ビジネス用語としてのマーケティングを「商品の販売促進をすること」と説明するのは、完全な間違いだと著者はいいます。 なぜならマーケティングの本質は、「商品の販売促進をすること」ではなく、「顧客を満足させること」だから。つまり、企業側からの視点か、顧客側からの視点かによって大きく違ってくるわけです。なお、そのことを理解するためによく使われるのが、「顧客はドリルが欲しいのではない。穴が欲しいのだ」という考え方。 たとえば、ある人がホームセンターにDIY用のドリルを買いに行ったとしましょう。その場合、目的は「ドリルが欲しい」からではなく、「穴を開ける」ことであるはず。そのためにはドリルが必要だということなので、穴さえ開けられればドリル以外のなにかでもいいということです。いわば、主役は「穴」。 この「穴」のことをマーケティング用語で「ニーズ」といいます。そして、「ドリル」のことを「ウォンツ」といい、両者は明確に区別されています。 ニーズは顧客の根本的な欲求のことで、ウォンツはそのニーズを満たすための手段の1つに過ぎません。「商品を販売すること」はウォンツ視点、「顧客を満足させること」はニーズ視点であることが、このドリルと穴の関係からおわかりいただけるのではないでしょうか。(17ページより) このように、ニーズとウォンツの違いを意識することは、マーケティングにおいてとても重要なポイントであるわけです。(16ページより)