専門店が続々登場!定番の「おにぎり」がブームになった理由
近年はコメ自体が復権の兆し
ブームの変遷を見ていると、おにぎりはだんだん、家庭から外へ出ていったことがうかがえる。何しろ、誰もが多忙な時代になって、食事の支度は時短を求められる傾向が強い。おにぎりは、炊きたてご飯を熱いままにぎることや、手が汚れるなどの手間が敬遠されるのかもしれない。おにぎりの相棒とも言える、海苔も家庭用の消費は減少傾向にある。 コメの消費量自体、半世紀以上減少傾向が続いているし、和食以外の選択肢が増えた今、あえておにぎりを作って食べる機会は少ないかもしれない。しかし愛されているからこそ、家庭の外でブームが起きるのだろう。 各地の昼ご飯風景を紹介する『サラメシ』(NHK)を見ていると、おにぎり入りの弁当も少なくない印象がある。意外に多いのは、おそらく、中におかずを詰め込んだおにぎりを食べる人たちが紹介されるからだ。多忙な仕事の合間に食べるなら、片手で食べられるおにぎりで完結する食事はラクだし、作り手の側も、弁当箱に詰める手間がかからず、おかずの種類も少なくて済むからだ。おそらく、おにぎらずだのごちそうおにぎりだの言われる前から、そうしたおにぎりを食べてきた人たちはいるのではないだろうか。 そうして考えると、おにぎりは、作り手や食べ方に変化はあっても、根強くしぶとく生き残ってきたから、今のブームがあるとも言える。しかもコメは最近、復権しつつある。パックご飯の質が向上して、個食が増える時代を追い風に人気が上昇。小麦アレルギーの問題も浮上し、ロシア-ウクライナ戦争の余波で小麦粉価格が上がり、米粉ブームも起きた。ご飯で食べるスパイスカレー、ハンバーグ定食なども人気だ。ごちそうおにぎりは、日本人が愛するコメ食の一つとして、定着していくのではないだろうか。 画像提供:Adobe Stock
執筆者情報
■阿古真理 作家・生活史研究家。1968年、兵庫県生まれ。食や暮らし、女性の生き方を中心に生活史と現在のトレンドを執筆する。主な著書に『大胆推理!ケンミン食のなぜ』・『家事は大変って気づきましたか?』(共に亜紀書房)、『ラクしておいしい令和のごはん革命』(主婦の友社)、『日本外食全史』(亜紀書房)、『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。』(幻冬舎)、『料理は女の義務ですか』・『小林カツ代と栗原はるみ』(共に新潮新書)など。 阿古真理さんの理想のキッチンに関するプロジェクトはご自身のnoteやYoutubeでもコンテンツを更新中です。 note https://note.com/acomari/m/m9283abc44cf1 YouTube https://www.youtube.com/@acomedia1919