八代亜紀の「舟唄」と「雨の慕情」が流れた昭和の大晦日。倉本聰作品『北の国から』では、紅白歌合戦の「雨の慕情」をどうしても見たいと純と蛍が…
2023年12月30日に、惜しまれつつ73歳でこの世を去った八代亜紀さん。演歌歌手として第一線で活躍したのはもちろん、ディズニー/ピクサーの映画『ファインディング・ドリー』で、本人役として日本語吹き替え版の声優を務め、日本版エンドソング「アンフォゲッタブル」も歌っている。八代さんは海洋生物研究所のアナウンス役で、ピクサー史上初めて、日米の有名スターの中で本人役での出演を果たした。そんな、日本の音楽史上、最高のシンガーの1人である八代さんが、NHKに残した貴重な歌唱シーンを集成したDVDがリリースされた。1973(昭和48)年から1981(昭和56)年にかけての昭和の大晦日の雰囲気とはどのようなものだったのか。娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサーの佐藤利明さんに、八代さんの魅力と、当時の空気について綴ってもらった 【写真】妖艶なドレス姿の八代さん * * * * * * * ◆紅白歌合戦で2年連続大トリ 名実ともに八代亜紀の代表曲というと、やはり「舟唄」(1979年)と「雨の慕情」(1980年)だろう。 1979(昭和54)年、今から45年前の大晦日の夜。日本全国のお茶の間のテレビから、八代亜紀の「舟唄」が流れていた。 もともとは1970年代前半、阿久悠がスポーツニッポンに連載していた「阿久悠の実践的作詞講座」で「美空ひばりが歌うこと」をイメージして作詞していた歌詞に、阿久悠とは堺正章の「街の灯り」(1973年)でコンビを組んだ浜圭介が作曲。八代亜紀が歌うことになったという経緯がある。 この年、5月25日にリリースされた「舟唄」は、年末に向けてじわじわとヒット。『第21回日本レコード大賞』では金賞だったが、『第30回NHK紅白歌合戦』では、八代亜紀が紅組の大トリで「舟唄」を歌唱。これがきっかけでレコードの売れ行きが急速に伸び、翌年、再び阿久悠と浜圭介コンビによる「雨の慕情」で、八代亜紀は『第22回日本レコード大賞』、『第11回日本歌謡大賞』を受賞。『第31回NHK紅白歌合戦』でも「雨の慕情」で大トリを務めた。 つまり、1979年と1980年の大晦日は、八代亜紀の歌声で締めくくられたのだ。この時の大晦日の紅白歌合戦の「熱気」は、リアルタイム世代だけでなく、現在でも映像作品で追体験することができる。
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