八代亜紀の「舟唄」と「雨の慕情」が流れた昭和の大晦日。倉本聰作品『北の国から』では、紅白歌合戦の「雨の慕情」をどうしても見たいと純と蛍が…
◆至高のレディ・シンガー 「紅白の大トリ」を2年連続で務め、日本の音楽史上、最高のシンガーの1人である八代亜紀が、NHKに残した貴重な歌唱シーンを集成したDVDと「舟唄」「雨の慕情」などビッグヒットを収録したCDを同梱した『八代亜紀 プレミア歌唱集』がリリースされた。 1973(昭和48)年から1981(昭和56)年にかけての八代亜紀の歌唱シーンを集めたDVDには、初登場となった『第24回NHK紅白歌合戦』での「なみだ恋」から、『第29回NHK紅白歌合戦』での「故郷へ‥‥‥」にかけての大晦日の歌唱が収録されている。 小学生までが「雨々ふれふれ もっとふれ」の手ぶりを真似するほどのブームとなった「雨の慕情」は、リアルタイムの『NHK歌謡ホール』(1981年)などの映像も存分に味わえるという。 改めて八代亜紀のパフォーマンスを映像と音で堪能すると、彼女の従来のイメージである「演歌の女王」の枠を遥かに超えて、例えばジュリー・ロンドンやビリー・ホリデイのような「至高のレディ・シンガー」であることを実感する。これほど豊かな表現力だったのかと。
◆昭和の大晦日の空気 今年没後10年となる高倉健主演『駅 STATION』(1981年・東宝・降旗康男監督)では、1979年の大晦日北海道増毛の居酒屋で、女将の倍賞千恵子と高倉健が、テレビで八代亜紀の「舟唄」をしみじみ観ているシーンが、男と女の物語のクライマックスとして描かれている。この『駅 STATION』は『北の国から』(フジテレビ)などを手掛けた倉本聰作品であり、倉本の集大成ともいうべき映画『海の沈黙』(若松節朗監督)が現在上映中だ。 その翌年の大晦日の紅白歌合戦と「雨の慕情」にまつわるエピソードは、『北の国から』第8話「水道」(1981年11月27日)に登場する。舞台は北海道富良野、1980年の大晦日、八代亜紀が「雨の慕情」を歌う紅白がどうしても観たいと純(吉岡秀隆)と蛍(中嶋朋子)が、友達の正吉(中澤佳仁)の家を訪ねるが、あてが外れてしまう。という展開だった。 いずれも劇中に、八代亜紀の「舟唄」「雨の慕情」にまつわるエピソードが効果的に登場している。遅れてきた世代にも、映画やドラマを通じて、昭和の大晦日の空気が体感できる。 来年、2025年は、昭和100年にあたる。リアルタイム世代だけでなく、遅れてきた世代にも「至高のレディ・シンガー」八代亜紀の魅力を、この、昭和99年の年末に改めて味わうことができるのは何よりも幸せなことである。
佐藤利明
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