ミセス「コロンブス」炎上を笑えぬこれだけの理由 初歩的なミス?文化や歴史認識のギャップはこうして起こる
3人組バンドMrs. GREEN APPLE(ミセス・グリーン・アップル)が6月12日に公開した新曲「コロンブス」のミュージックビデオ(以下MV)に人種差別的な表現あるとして炎上した。 【画像】ミセス扮するコロンブスたちが部屋をのぞくと、そこには数匹の類人猿たちが・・・・・・ 本楽曲はコカ・コーラのキャンペーンソングとしてリリースされていたが、同社は当該楽曲を使用した広告素材の放映を停止している。さらに、TBS「CDTVライブ!」の出演も見合わせる事態となっている。 MVの内容は、メンバーの3名がコロンブス、ナポレオン、ベートーベンと見られる歴史上の人物に扮し、類人猿に文明を伝えるというものだ。この表現は「問答無用でNG!」と言える不適切なもので、Mrs. GREEN APPLE側を擁護する意見はほとんど見られない。
ただ、このケースは決して特殊な事例とも言えず、これからも同様の問題が起きる可能性はある。今回の件から学ぶべき点は多く、それについて考察してみたい。 ■ミュージックビデオの何が問題だったのか? 「コロンブス」のミュージックビデオの問題点は下記である。 1. コロンブスに対する歴史的評価 2. 先住民族支配を想起させる表現 上記の2つは表裏一体であるが、論点を明確にするために、あえて分けて見ていきたい。
1点目だが、コロンブスに対しては、歴史的な評価は近年大きく変わってきている。筆者が中高生の頃(30年以上も前のことになるが)のコロンブスは、歴史の教科書にはそこまで書かれていなかったと記憶しているが、「アメリカ大陸を発見した偉大な人物である」という認識が一般的だった。 筆者の手元には、2010年時点の山川出版社の世界史の教科書があるが、コロンブスについてはバハマ諸島に「到達した」あるいは「上陸した」と記述されており、最後までこの地を「インドだと思い込んでいた」と説明されている。
現在では、コロンブスの侵略者、奴隷商人としての側面も知られ、問題視されるようになっている。2020年のブラック・ライブズ・マター運動においては、コロンブスは先住民虐殺、アメリカ大陸の植民化のきっかけを作った人物として、各所で銅像の破壊、引き倒しが起きた。 念のために言っておくと、Mrs. GREEN APPLEの楽曲の歌詞は、負の歴史を肯定するような要素は入っていない。ただ、上記の経緯を知っていれば、2020年代において、コロンブスという人物を取り上げること自体がリスクであることは、すぐに理解できたはずだ。