アップルやグーグルはいかに巧妙に市場を独占してきたのか、巨大IT規制法導入の背景
■ なぜOS機能のオープン化が必要か? 岸原:新法において、もう一つのポイントが「OS機能のオープン化の必要性」です。OS機能をオープンにすると「プライバシー」「セキュリティ」「青少年保護」の観点で、リスクが大きくなるという不安の声を聞きます。しかし、OSがクローズで、サードパーティーが利用できないことこそが問題の本質だと私は思います。 iOSの青少年保護機能のスクリーンタイムが、アップルのApp Storeと垂直統合されているので、代替アプリストアを利用することができていません。 スクリーンタイムで、アップルが採用していないIARC等の国際レーティングが利用できるようになれば、他のアプリストアでも、アップル同等のレベルで青少年保護機能を提供することが可能になります。 アプリストアでは、年齢に応じた4段階程度の分類を行うことで、青少年及び保護者は、年齢に合ったレーティングのアプリだけを利用することができます。 アップルは、独自基準でアプリを審査していますが、国際レーティング機関のIARCは、任天堂やソニー、マイクロソフトやグーグル等の大手企業と各国のレーティング評価機関が共同で運営しているものです。 SMS等のメッセージングにおいても、クローズな環境がプライバシー・セキュリティの低下を引き起こしています。また、米国ではメッセージのデザインの違い(iPhoneは文字の下地の色が青色、それ以外は緑色)から、iPhone以外の子どもが仲間外れにされるといった問題も起きているようです。 国際標準のRCSを採用して、SMS機能がオープン化されれば、よりセキュアな多要素認証や、リッチなメッセージングが実現され、問題が解決されると思います。 ──今年3月に、類似の新法がEUで施行され、後を追う形で日本がこの新法を作ったという報道があります。実際はどうなのでしょうか? 岸原:EUでは、3月7日に「デジタル市場法」の運用が始まりました。ゲートキーパーに指定された巨大IT企業の内、アップル、グーグル、メタについては法律遵守状況についての調査も開始されました。1年以内に結果が出る予定です。 米国については、新たな法案は検討されていませんが、個別の訴訟において、EUを上回るスピードで規制が履行されています。 昨年12月11日に、グーグルが独占禁止法廷闘争に負けて改善案が示されています。また今年3月22日には、米司法省が、アップルをiPhone巡る独禁法違反の疑いで提訴しました。 日本においても2019年から、内閣官房のデジタル市場競争会議で検討が始まり、昨年6月16日に今回の新法のベースとなった最終報告が発表されました。ですから、各国と歩調を合わせて慎重に法制化を進めてきたと言えます。 ──この新法によって社会全体を良い方向に進めるためには、プラットフォーム事業者はじめ社会がどのように対応すべきだと思われますか?