アップルやグーグルはいかに巧妙に市場を独占してきたのか、巨大IT規制法導入の背景
■ 「死刑宣告」とも言えるスパム認定 岸原:そうです。どのレベルまで似たようなアプリが許されるかは分かりませんが、「独自性」や「アプリらしさ」をアップルが判断します。アプリ事業者からすると「なぜ自分がダメと判断されたのか、よく分からない」という事態が頻発しています。 また、同様の規約でスパムという条項もありますが、一般的なアプリでも「スパム認定」を受けてしまうと、アプリ事業者にとっては死刑宣告と同じで配信できなくなります。 さらに、審査チームによって判断が変わるようです。「アプリらしさ」などという基準は人の主観によって変わるからだと思います。業界では「審査員ガチャ」などとも呼ばれます。 ──App Store以外のアプリストアもiPhone内で認められれば、より多くのアプリが販売可能になるということですね。 岸原:はい。無制限にいくつでも出せるようになるとは思いませんが、これまでは、アップルの基準だけで販売可能かどうか判断されていた状況が、アプリストアの数だけいろいろな基準ができます。 先ほどの新宿の例で言うと、「自社の基準に合わない」という理由で伊勢丹では出店できなくとも、小田急から出店できるかもしれないということです。 ──新法では、新たなビジネスモデルの阻害もテーマになっています。 岸原:NFTの取引は、様々な仮想通貨を使って行われますが、iPhoneの中では、iPhoneの課金システムを使わなければならないという決まりがあります。 NFTやWeb3のシステムは、基本的には分散処理です。これに対して、アップルのモデルは集中処理です。両者は相反する考え方を持っています。 ──新法を通して、様々なアプリストアが出てくると、NFTやWeb3を許容するストアも出てくるということですね。 岸原:その可能性があるということです。アプリ事業者には大きな可能性になると思います。 ──アプリ事業者は、自由度の高いストアから製品を出したいということですね。 岸原:そうです。また、日本独自文化の保護という意味では、現在アップルやグーグルでは、西洋の価値観で漫画やアニメ等の日本の文化を審査しており、表現の自由度という観点から問題が指摘されています。 「エログロだ」といった指摘のもとに、いわゆる「クールジャパン」の表現を黒塗りしないと配信できないという極端な例もあります。 幼い時の憧れや、ある種のギャグとしての描写さえ、児童性愛の扱いを受けてしまう。私たちの国の文化をより許容する基準を設けたアプリストアがなければ、クリエイティブの現場で萎縮が進み、日本の独自文化が衰退していく可能性があります。 ──「アプリストア」に関する問題ばかりではなく、「モバイルOS」に関する部分も指摘されています。