衆院を解散した午後、奄美市市街地の様子

　石破茂内閣は9日午後、衆院を解散し、与野党は事実上の選挙戦に突入した。首相就任後8日での解散は戦後最短で、十分な国会論戦の機会も確保されず、争点が不明確なまま総選挙に入る。奄美市、大島郡を含む鹿児島2区では5人が立候補に向けて準備している。有権者らは国や候補者に何を望むのか。街で声を聞いた。 　龍郷町で農業を営む男性（62）は早期解散に「裏金問題も大事だけど、一番は物価高対策。本当はしっかりと議論をした上で、解散してほしかった」と憤る。2区の候補者については「5人？どうだろう。真剣に経済や景気対策をやってほしい」と話した。 　奄美市の宿泊施設で働く男性（37）は「人材確保に取り組んでほしい」と話す。「人手不足は日常的で、多忙が続けば若い人もやめていく。将来（の対策）にもっと力を入れてほしい。若者の声にも耳を傾けてほしい」と訴える。 　年金とパートで生計を立てる市内の70代女性は「働きたくて働いているわけではない。年金だけでは幸せに暮らしていけない」と漏らす。「年金でも遺族年金は非課税だったり、不公平もある。政治家はいいことばかり言うけど実現した試しがない。誰がなっても平等な世の中にしてほしい」とトーンを強める。 　共働きで子ども2人を養う市内の女性（30）は「これから子どもが高校、大学へと上がっていく。今のままでは不安しかない」と嘆く。「石破さんも都合のいいことばかりで国民を見ていない。国には頼りたいが、政治家は信用できない」と不信感をにじませる。 　15日の公示を控え、それぞれの視点で争点を見いだす有権者もいる。ただ、裏金問題を発端とする政治不信、物価高による生活への不満を訴える声は後を絶たない。 　自民党奄美支部の永田清裕幹事長は「公認いただき、ようやくスタートすることができた。今後は地元議員も含め、住民の声を真摯（しんし）に受け止めて丁寧に説明しながら、信任を取り付けていかなければならない」と選挙モードに。新たな顔である石破総裁については「鹿児島の投票結果に出ており、地方を思う気持ちは9人の中で一番一貫していた」とプラスと捉え、「課題もあるが停滞してはいけない。奄美のために何ができるかと精いっぱい考えながら、候補者を石破さんのもとに送り込んでいきたい」と話した。 　共産党奄美地区委員会の﨑田信正委員長は、「石破総理になってからは見ての通り。自民党政治は何も変わってない」と新政権へチクリ。「一番は裏金問題、そういう感覚のある人間が今の国を動かしていることがおかしい。政治を変える以外に変わる方法はない」と主張しつつ、「国民生活を無視した軍拡や政治は反対だ。（有権者へは）問題意識を持ち、正論をどれだけ広げられるかが鍵。きちんと訴えていきたい」と選挙を見据えていた。