ヤクルト・青木宣親＝神宮球場

【球界ここだけの話】ヤクルトは今季、球団創設55周年の節目のシーズンだった。1950年に国鉄スワローズとして始まり、70年からヤクルトアトムズ、74年からヤクルトスワローズ、2006年から東京ヤクルトスワローズとして活動している。 長年、プロ野球を盛り上げ、リーグ優勝を9度、日本一を6度達成。多くの名場面を生み、名選手を輩出してきた。その中で、歴代の選手たちが伝統を引き継ぎ、「今」がある。 球団のレジェンドでもある青木宣親外野手（42）が今季限りで現役を引退した。9月13日に行われた引退会見。青木はスワローズの良さを明かし、伝統の継承を後輩たちに託した。 「（ヤクルトに）入ったときから、すごくメリハリのあるというか、やるときはやるし、みんなで楽しんでやるところはやる。なんか学校みたいな雰囲気もある。そこは、童心に帰るというか。クラブハウスに行くと、ぎすぎすした感じより職場は楽しいほうがいいし、何かそうやって明るく、前向きにしやすい環境がヤクルトにはあると思う。それはもう伝統として受け継いできたつもりですし、それを後輩たちも感じて、いい伝統を残していってほしいですよね」 「ファミリー球団」と言われ、仲の良さでも有名。ただ、仲良しこよしのチームではなく、メリハリをつけて戦う強さこそヤクルトの伝統の一つなのだ。 そして、青木は2019年の復帰後、チームに新しい風を吹き込んだ。トレーニングやケア、体の動かし方について突き詰めてきた経験、知識を生かし、後輩たちに伝授。春季キャンプでは、ウオーミングアップに入る前からどうやって練習に臨めばいいかを考え、実践してきた。 「やっと浸透してきたよ。最初は全然だったから」 青木の行動を見て、後輩たちの意識も変わり、今やほとんどの選手が朝早くから球場を訪れ、トレーニングルームなどで体を動かすようになった。ある選手は「みんないて場所がないから、室内練習場でやるよ」と明かすほどで、チーム全体に変革が起きたのだ。 「伝統を作る」ことは難しい。青木も長年伝え続け、やっと形となってきた。この教えを引き継ぎ、継続していくことこそ、思いを託された後輩たちの使命でもある。青木の偉大さ、すごさを改めて感じつつ、来季以降のヤクルトの躍進にも期待したい。（赤尾裕希）