銭湯サークル復活、営業支える

　時代とともに風呂なしアパートに住む下宿生は減っても、銭湯と学生の固い絆は変わらない。 【画像】これまで手がけたグッズを手にする「湯道部」の田城部長（中央）と部員ら（京都市左京区で）

営業終了後、掃除に励む竹林さん（京都市左京区の「東山湯温泉」で）

　京大近くの「東山湯温泉」（京都市左京区）。店主の東山四郎さんは腰を、妻の広子さんは膝を痛めている。週2日、営業終了後に掃除をするのは「京大銭湯サークル」の学生たちだ。夫婦は「ありがとう」と学生たちに感謝し、「銭湯をまだ続けていきたいと思っているから、本当に助かる」と話した。

　サークルの会長は、工学部の竹林昂大さん（26）。「365日欠かさず入る」ほどの銭湯好きで、アルバイト先にも銭湯を選ぶほど。そのなかで高齢化や人手不足で店をたたむ経営者が後を絶たないのを知り、危機感を抱いた。「若い世代を巻き込むことが手助けにつながるのでは」と、今春、休止状態だったサークルの会長を引き受けた。

　サークルの発足は2021年で、その頃、竹林さんは活動に関わっていなかった。当時、約30人のサークル員が東山湯温泉の掃除を手伝うなどしていたが、メンバーの卒業などで、昨年には休止状態に。事情を知った竹林さんは「それなら自分が」とサークルを引っ張ることを決意。呼びかけると銭湯好きの学生が集まり、あれよあれよという間に約140人が所属するまでになった。

　今では京大だけでなく、同志社や京都工芸繊維など他大学の学生もメンバーに。うわさを聞きつけた駒沢大（東京）の学生が見学に訪れるほどで、竹林さんは「京大のみならず、全国の各大学に『銭湯サークル』が広がって、若者が手伝うのが当たり前という風潮になってほしい」と話す。

風呂掃除で家賃と光熱費タダ

　苦学生との“共存共栄”を、令和のいまも続けるのは「山城温泉」（京都市上京区）だ。施設の裏で「週2日の掃除の代わりに家賃、光熱費無料」の学生寮を運営している。

林店主（中央）と学生たちはまるで家族のよう（京都市上京区の「山城温泉」で）

　営業終わりの深夜1時から、店主の林大輔さん（46）と学生らで床や鏡、カランなどをくまなくデッキブラシやたわしで磨く。高温多湿の銭湯での掃除は「想像よりはるかにしんどい肉体仕事だ」という。