決勝で敗退もこの夏に見た「帝京魂」の新たな形 伝統の3合飯廃止、個性尊重...進化する野球部の現在
【試合巧者の関東一に惜敗】 だが、関東一の壁は高かった。東東京大会決勝、春夏連続出場を目指す試合巧者を前に、帝京は5対8で屈する。5回表に守備が乱れ、4失点を喫したことが大きく響いた。 試合後、金田監督は口を開くと、「勝ちたかった......」と絞り出した。 選手を責める言葉はなく、指導者として「チームで一番未熟で、鍛えないといけない立場」といった自責の言葉が続いた。 とはいえ、新生・帝京としては年々進化した姿を見せられているのではないか。そう問うと、金田監督は強い口調でこう答えた。 「選手は1年、1年が勝負ですし、私も3年生と一緒に引退するくらいのつもりでやっています。先を見るつもりはありません。結局、彼らの夢をかなえられなかったので、それでは意味がない。帝京とは、そういうチームなので。監督として責任を感じます」 正捕手の丹羽は「試合前は勝てる気しかしなかった」と振り返り、こう続けた。 「練習の質と強度が上がっていて、一昨年より去年、去年より今年とレベルアップしている自信がありました。これまでやってきたことを出せれば甲子園に行けると思っていました。負けてしまって、今まで味わったことのない悔しさを感じています」 「帝京魂」という言葉がある。今の選手たちは、この言葉をどう解釈しているのか聞いてみたかった。丹羽は慎重に言葉を選ぶように、こう答えた。 「『帝京魂』は過去の先輩方がつくってくださったキーワードで、結果を出していない自分たちが使うのはおこがましいというか......。自分たちはあまり意識せずに、帝京の新しい歴史をつくりたいと考えています」 今年も甲子園に出られなかった。その結果だけをとらえると、「復活」の言葉を使うのはためらわれる。それでも、帝京は間違いなく前に進んでいる。それだけは強調しておきたい。 2024年の夏、彼らは強烈なインパクトを残してグラウンドを去った。
菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro