決勝で敗退もこの夏に見た「帝京魂」の新たな形 伝統の3合飯廃止、個性尊重...進化する野球部の現在
昨秋はブロック予選で二松学舎大付と対戦し、0対8で7回コールド負け。本大会にすら進めず、選手たちは肉体改造に明け暮れた。西崎は、その重要性を強調する。 「野球は地面から力をもらうスポーツだと思います。スクワットやデッドリフトなど、とくに下半身を重点的に鍛えてきました」 【帝京伝統の3合飯は撤廃】 帝京にはかつて、「3合飯」という伝統があった。3合分の白米をタッパーに詰め、昼食時に食べていたのだ。体を大きくしたいと考えた選手が自主的に始めた伝統だったが、糖質の過剰摂取を指摘する声もあった。 今も「3合飯」はあるのかと尋ねると、西崎は苦笑を浮かべて「もうないです」と答えた。 「ただ、今の代から朝は400グラム以上、夜は800グラム以上の米を食べようと決めていました」 帝京といえば、かつては自宅からの通い生がほとんどを占めたが、現在は学校の近所に私営の寮が建ったことで寮生も増えている。今年はレギュラー9人中7人が寮生で、パワーアップに成功した。 チームとしてさまざまな変化が見えるが、西崎はフィジカルの強さこそ帝京のアイデンティティーだと考えている。 「映像を見ると、昔の帝京の選手は体が大きくて、飛ばすイメージがありました。今の自分たちも体の強さにかけては自信を持っています」 今夏も帝京の打線は火を噴いた。東東京大会準決勝の東京戦ではプロ注目右腕の永見光太郎を18安打13得点と打ち込み、13対3の8回コールドで圧勝している。 帝京のチーム内では「自分のスイングをするだけ」という言葉が飛び交っている。西崎はその心を解説する。 「回るスピードを速くすることと、強く振ること。練習からピッチャーに合わせるスイングをしないことを心がけています」 決勝戦に進出しても、満足そうな顔をしている選手はいなかった。金田監督は言う。 「甲子園に出場するだけでなく、甲子園で優勝するチームをつくってきたつもりです。毎試合、『圧倒』というフレーズを使って戦ってきました。打つ、守る、投げる、走る、すべてにおいて圧倒できるようにしていきたいです」 機は熟したように見えた。