モスル陥落もISは国外拠点で「カリフ国」再建目指す? なお続くテロの脅威
欧州に入り込むISの外国人兵士
最近、ISのメンバー、あるいはその支持者が、欧州やアジアなどでテロ事件を起こしているという報道が頻繁に見受けられます。それは、IS首脳部の許可を得て母国に帰還した欧州人、アジア人、北アフリカ人などが、シリアやイラクで空爆された報復のために有志連合の参加国に対して直接報復するという意図が込められた攻撃と考えられます。 ISの最高指導者バグダディ(死亡確認の報道あり)が2014年6月に「カリフ国」建国を宣言した当時から、これまでに世界中から3万人ともいわれるIS信奉者がISへの合流を目指し、国境管理の甘いトルコからシリアに入ってきました。米国政府の試算によれば、このルートでシリアに侵入した外国人戦士3万人のうち2万5000人が既に戦闘や自爆テロで死亡したとのことです。今年になって立て続けにテロが発生している英国に関しては、ISやアルカイダ系の「ヌスラ戦線」に合流した英国人は約850人で、うち約200人は現地で戦死したといわれますが、400人程度は既に英国に帰国しているとみられています。こうした帰国外国人戦士が、テロの実行犯かテロの牽引役になっていると考えられています。 シリア-トルコ国境の警備は、国際社会の圧力を受けて以前とは比べものにならないほど厳しくなっており、最近トルコ側に侵入しようとしたISの外国人戦士が国境で逮捕されるという事例が相次いでいます。逮捕者の実数は明らかにされていませんが、英国人夫婦(英国人の妻は後に釈放)や現地でシリア人女性と結婚した米国人カップルが拘束されたとの報道も見られました。彼らは、母国に身柄が引き渡されれば、テロ組織のために戦闘に参加した罪を問われ、テロ法で処罰されます。 実は、こうして国境で拘束される例は極めて希なケースで、現地で密航あっせん人に頼んで易々と国境を通過している戦士はその何十倍にも達しているといわれています。さらに、こうした密航のほかに、難民に紛れ込んで国境を通過し、ギリシャ、ブルガリアなどを経して欧州に入り込むテロリストもいます。こうしたISの最高指導部から密かに指令を受け、機会を見てテロを実行しようとする者は、少なく見積もっても250人はいるといわれています(英国ガーディアンの報道より)。