拒否反応で首が震えた――「元天才子役」美山加恋、芝居への“怖さ”乗り越えた今
プロとしての自負「やったことのない仕事はない」と言いたい
俳優を続ける。 そう腹をくくってからは、演じることだけでなく、他人の芝居を見ることが好きになった。映画、舞台を貪欲に見るようになり、共演者たちの動きも注視する。意識して芝居を学ぶことで、演じられる役の幅がグンと広がっていくことを実感した。 今までで一番嬉しかった仕事は? と尋ねると、声優として「プリキュア」で役を射止めたこと、と笑顔で答えた。今でこそ俳優・声優の二足のわらじを履く人は増えているが、2017年当時はまだ、俳優が声優をやることに対してアンチな声もあった。プリキュアシリーズにおいて俳優が起用されたのは、美山が初だ。 「声優1年目でしたし、当時の風潮もあって、正直反応は怖かったですね。ファンから見れば、信頼が置けないだろうと思いましたし。でも初回が放送された後、ネットには好意的な意見がたくさん上がって、嬉しかったですね。泣きました、放送見ながら。やったあ、って。新しい世界に踏み込んで、そこで評価をされるって、こんなに嬉しいんだ!って心から思いました」 どんな役にも挑戦してみたい。芝居で「できない」部分はなくしていきたい。子役のころから、第一線で活躍する俳優たちを見上げつつ、そう考えてきた。 「なんでも演じてみたいんですよ。“あんな顔して実は殺人犯”とか(笑)。あとは、恋愛ものもあまり経験がないから、やってみたいな。おばあちゃんになったときに『私このお仕事やったことない』って言いたくないんです」
人に相談する代わりに、ノートに思ったことを書き連ねる
20代の現在も、仕事、プライベートともに人との関わりについて考えさせられることは多い。 「ささいなことで傷つきがちなんですよね。なんでこんなことが言えなかったんだろう、ああすればよかった、とか。それで毎日反省したりするんですけど」 その日に失敗したことを、ベッドに入ってからふと思い出してギョッとすることがある。眠れなくなるほど考えることもある。そんなとき、ノートに言葉を書き連ねるようになった。 「あまり人に相談をしたりするのは得意じゃなくて。高校生くらいから、日記をつけています。自由に、その日にあったこと、明日やること、買うものなど、なんでもノートに書くんです。それで心の整理ができるんですよね。お風呂に2時間くらいつかりながら、スマホでYouTubeを見つつ、日記を書くっていうのが、ストレス発散方法。ノートがシワシワになるんですけど(笑)。あとは……お酒も気分転換になってますね。毎日缶ビールを飲んでます」 内省的で、職人気質。彼女の言葉から、そんな実像が浮かび上がってくる。 元天才子役は今、ひたすらに努力の人なのだ。