拒否反応で首が震えた――「元天才子役」美山加恋、芝居への“怖さ”乗り越えた今
はじめは「習い事感覚」だった芝居も、何度も繰り返していくことで自分なりの手応えを感じるようになっていく。母親と取り組んできたセリフの練習も、小学4年生で昼の連ドラに出演するころになると、一人で台本を読むようになっていた。 「中2のとき、ほぼ初体験のような状態で舞台に立ったんですが、それはある意味、ショックな出来事でした。ドラマでは子役として『次はこういうシーンだよ、こういう気持ちだよ』とかってスタッフさんがいろいろ気遣ってくれたんですが、その舞台の現場では全然違って、自分で考えて演じることが求められました。稽古後には、みんなで食事に行って反省会をするんですけど、そういう場に参加したのも初めての体験で。これが大人の世界かぁ……って、子役から“俳優”の仲間入りをしたような気持ちになって」
その舞台をきっかけに、本格的に進路について考えるようになった。大人の世界に刺激を受け、芝居を続けたいと思う一方、学校の友人たちが選ぶごく一般的な進路を眺め、迷いも生じていた。幼いころ共演をした子役時代の友人たちも、ほとんどがやめていく。アイドルを志した者もいたが、芸能界に残ったのはごくわずかだ。 「周りを見ると、高校から大学に進学して、普通に就職して……っていうコースを歩もうとしている友達がいる。この会社に入ればこれくらいの給料がもらえて、自立できるとか、私の仕事にはそういう目安になるようなものがない。とても不安定なので、本当に自分は一人でやっていけるのか、心配になったこともありました」
悩み多き思春期
幼いころから仕事を続けながら、学校生活もごく普通に送っていた。自身の思春期について、「いやあ、結構悩んでましたよね」と振り返る。 「仕事以外にも、進路、友達との関係、いろんなことが重なっていたので、よけいに自分自身がわからなくなった時期。現場でも、『私は今なんでここにいるんだろう? 本当に好きなのかな』とか、そんなふうに思ったり。“子どもの自分”も、“大人の自分”も、その時々で求められる。え、このままじゃいけないのかな、とか、そういう迷いから不安が生まれて、今のお芝居じゃダメなのかなとか、こんな性格では友達とも付き合えないとか、家族ともどう折り合っていったらいいのかなとか……。しばらくお芝居をするのが怖かった時期がありました。結局、お芝居には自分自身を投影するので」 プライベートで自分にダメ出しをするたび、芝居に向き合うことが怖くなった。体が拒否反応を起こして、首が震えてしまうのだ。両手で首を押さえながら語った。 「自分の意思とは関係なく、ここが勝手に緊張状態になってしまうんです。うわぁって思うほど震えてしまって。そんなことが何度かありました」 あまりにも強い、「凛ちゃん」のイメージ。「子役出身だから、できて当然でしょう」というプレッシャー。友人たちとは異なる先の不明瞭な進路を、たった一人で歩む不安。ただでさえ誰もが苦しむ思春期、背負ったものは大きかった。 「両親は、続けるなら頑張れ、やれないと思うのなら、やめてもいいと。どちらを強いることもなく、要所要所で考える時間をくれました。もし自分の子どもが将来、この世界に入りたいと言ったら、幼いころからはやらせないかな。学校でいろいろなことを学んでから決めてほしいなと思います。別に私がそうしたかったわけでは全くないんですけど」