上場しなくてもいい。地域VCが描く新しいビジネスモデルとは?
株主とのコミュニケーションで求められること
■失敗しない投資とは 諦めない経営者と10年の期限 松本:創業投資において諦めない経営者に投資していると成功確率が高いと気づきました。いろんな人を巻き込み、自分ではなく世のため人のために頑張っている人は諦めない。社会課題や地域課題を解決しようとしている経営者にお金を出すような仕組みを作るようになったんです。 創業ファンドと呼んでいたものが、次は社会課題解決ファンドを作ろうという動きになったりと、1号ファンドの組成が終わると、2号、3号、4号ファンドとずっと設立されていきました。そういった形で、地域の課題解決や地域金融機関の役割を果たすためにエクイティが使えるんだと設計をしてきました。 いわゆるファンドの投資で失敗と呼ぶのは、上場できず投資回収金額が少なかったり、M&Aでも高く売れなかったりと、少額しか回収できないことです。 でも地方創生ファンドは、投資した先が潰れず利益が出るような状態になって、自社株買いさえしてもらえば成功なんです。ということは、利益が出るまでずっと応援し続ければいい。ファンドの期限を初めは10年と決めているけれど、特定の出資者と期限を伸ばすと決めればずっと延長できるので、投資先が事業継続を諦めない限り失敗になりません。 山田:VCをなぜ10年でやるかというと、リターンという金融商材としての部分が大きいですよね。ですが、そうではないところで見ると期限は別にいらないということですね。 ■株主とのコミュニケーション 何を今求められているのか 松本:そうやって、フューチャーベンチャーキャピタルを徐々に黒字化していきました。いわゆるSaaSのビジネスモデルなので、積み上げ型であるうえに、もし投資した会社が上場して成功してくれたらプラスで入ってくる。 加えて、東京のベンチャーキャピタルのロジックだとどうしても救えない地域の起業家に良いことをやっていたという実感もあります。 山田:ではなぜ社長をクビになったのでしょうか……? 松本:要は株主が求めていることと、取り組んでいることが違ったんです。社長になった時にたくさん株を持っていた方々は、私がこうしたビジネスモデルを作ることに期待して持っていたわけではありませんでした。 当時の投資先である、アベノミクスの一丁目一番地だと言われた、自動運転技術開発をする投資先によって、株価が爆上がりした時に株を持った方々だった。時価総額5億円から300億円まで上がった時に持っていた株主がたくさんいましたが、その後その投資先が上場せず、株価がその後どんどん下がっていきました。その間にビジネスモデルは改善できたけれど、株主からするとそんなことは求めていなかったんです。 それを経営者として、いつまでにどんな状態にするのかのコミュニケーションを取れていませんでした。 藤田:ビジネスモデル的にも、急激に戻るものではないですよね。 松本:はい。しかも新卒で入った時に上場していて株を買えなかったので、株をほとんど持っていませんでした。その時に、経営陣総入れ替えの株主提案を受けて。嘘でしょ?とびっくりしましたが、結果的に経営陣の主張は通らずに、その提案側の主張が通りました。 提案が通ったのは、株価が高い時に株主になられた方々の期待をわかりやすく叶えてくれる提案だったからじゃないかと思います。株主とのコミュニケーションが本当に大事だと、スタートアップの皆さんに伝えておきたいです。