裁判官の「地域賃金差」は司法劣化の元凶なのか エリート司法官僚が最も恩恵を受ける仕組み
●元裁判官「地域手当はへき地手当のみとすべき」
こうした裁判官と地域手当の関係について弁護士ドットコムは7月、会員の弁護士を対象にアンケートをした。281人が回答した。 地域手当があることについては「妥当」と「やや妥当」を合わせて53%と半数を超えた。「不当」「やや不当」は計24%だった。 不当などと答えた理由(複数回答)は「裁判官の判断がゆがむから」が45%で、「全国均一の司法が実現できなくなる」が42%などだった。地域手当の地域差については、「妥当」と「やや妥当」が計27%だったのに対し、「不当」「やや不当」が計43%と逆転した。
回答者の中には元裁判官も7人いた。うち5人は制度自体を「不当」「やや不当」と答え、「妥当」は1人だった。妥当と答えた元裁判官も「生活基盤を定めた裁判官の転勤配置が生活の根底を揺るがしかねない重大事であり、裁判官統制の一番有力な手段となっている」と記述して、「地域手当の不平等感はあるが、根本問題ではない」と指摘した。 地域差については「不当」「やや不当」が5人で、残る2人は「どちらとも言えない」を選んだ。不当と答えた元裁判官は「差別される裁判官は地域手当がほとんどないまま転勤することになる。そのためにヒラメ裁判官が生まれ、司法を劣化させてきた」と指摘した。 別の「不当」を選んだ元裁判官は「地域手当はへき地手当のみとすべき。裁判官はその独立を守るため、希望以外の転勤はすべきではない」と答えた。 人事院勧告と同時に出た「職員の給与に関する報告」は、地域手当について「最大20%という支給割合の差が過大ではないかなどの指摘があり、支給割合の差の在り方について今後とも検討していく」と表明した。これまで10年ごとだった見直しも、より短期間で見直すという。 現場の切実な声に耳を傾けて、裁判官が真に独立して判断できる環境整備に役立てるべきだろう。