戦力外通告を受けた人に光を!
現在、武田氏は、自らの人脈や知人の紹介などをたどって、受け入れ先となる企業を増やしているが、すでにゼネコン業界などからは、引き手あまたの状況。 武田氏の考え方に共感して、事業参加している今中氏が言う。 「プロ野球の世界で努力を続けてきた、そのガッツや、コミュニケーション能力、礼儀正しさなどが、貴重な人材として企業から求められているんです。でも、これまでは元プロ野球選手が欲しくても窓口もなかったし、触れ合う機会も少なかった。その窓口のひとつに僕らがなって、セカンドキャリアをスムーズに運ぶお手伝いができればいいと思う。まだ東京の企業が中心ですが、これからは名古屋、大阪と支援してもらえる企業の幅も広げていきたい」 最近の若手のセカンドキャリアの志向が“サラリーマン”だけに、武田氏、今中氏の試みは、時代にマッチしている。武田氏は、NPBのセカンドキャリアサポートの担当者や、ソフトバンクの王貞治会長、巨人の原辰徳監督らを表敬訪問して協力を仰いだ。 「球界全体がセカンドキャリアについて真剣に考えていかなくていけないでしょうね」 NPBは2007年にセカンドキャリアサポート事業をリクルートの協力を得て立ち上げたが、現役時の啓蒙活動や、引退後の進路相談や進路紹介がうまく機能しているとは言えない。Jリーグのセカンドキャリア事業に比べて手ぬるい。 セカンドキャリアの支援事業を進めるためには、選手会との協力が不可欠だが、その連携も、年金制度も財源不足で頓挫したままだ。プロ野球は、夢を売る仕事だが、夢破れた後の人生があまりに無惨ならば将来的に人材難を招く危険性もはらんでいる。 プロアマの雪解けによって、アマチュア指導資格の回復について、従来のような教員資格取得して2年の教員経験が必要という高いハードルが取っ払われ、研修だけでOKとなったことでセカンドキャリアの間口は広がった。だが、その受け皿にも限界はある。 武田氏が起業したような民間の知恵を借りながら戦力外通告の“その後”の道筋を考えていかねばならないだろう。 (文責・本郷陽一/論スポ、アスリートジャーナル)