「どこにいるんだ、亮太…」 御嶽山の噴火で行方不明になった家族を探して10年 自費で捜索を続ける父と叔父の変わらぬ思い
そうしたなかで、行方不明者の捜索を続けてきた「山びこの会」事務局代表・シャーロック英子さんが、噴火から10年の区切りを迎えた今年、今までのような捜索は行わないという、苦渋の決断を下しました。山岳捜索のプロに現地調査を依頼した結果、10年という歳月が招いた厳しい現実に直面したからです。 調査を行ったマウンテンワークスの三苫育代表は、「人間が人間としての形を保てる時間は非常にわずかであって。ばらばらになってしまって、それを骨であると認識するのは非常に難しい時期になっている」と話します。
その報告を聞き、かなり落ち込んだという父・敏明さんと叔父・正則さん。しかし、「可能性はごくわずかでも、やらなければゼロになる」と、現地調査をした会社に自費で依頼することを決断しました。
「絶対連れて帰る」 家族が再び御嶽山へ…
捜索が行われた9月23日の朝、御嶽山は快晴となりました。 これまでは、亮太さんが滑落した可能性のある谷を中心に捜索してきましたが、今回は谷に沿ってさらに400メートルほど下ります。谷筋を目指し急斜面を進んでいくと、スタッフが転倒。常に危険と隣り合わせです。
捜索現場では父・敏明さんが岩の間から劣化した手袋を発見。さらに、靴底のようなものも見つかりました。 捜索に同行したマウンテンワークスの三苫代表は「靴の中に足の骨が入っていることがたまにある」と話しますが、ここは土石流や近年の大雨で地形が大きく変わった場所。亮太さんの手がかりとなるものを見つけることはできませんでした。
叔父・正則さんは花を手向け、「どこにいるんだ、亮太。出てこいよ…」と、この山のどこかにいるはずの亮太さんに語りかけます。 亮太さんの父・野村敏明さん(64): 「この広い御嶽山の斜面、探せば探すほど深みにはまっていく感じもあるので、(捜索の)状況を聞いてアドバイスをもらいながら(見つけるための方法を)考えます」 御嶽山の噴火から10年。どれほど時間が経とうと、連れて帰るその日まで、家族を思う気持ちは変わりません。