フェルスタッペンのレッドブル離脱は本当に”あり得る”。チームも知らなかった? 秘密の条項が開く道
レッドブルのマックス・フェルスタッペンは、F1開幕2連勝をマークし2024年も圧倒的なパフォーマンスを見せている。しかし、彼がレッドブルを離れる可能性について、憶測は止まっていない。 【F1ハイライト】F1 2024第2戦サウジアラビアGP決勝 フェルスタッペンは2028年までレッドブルと契約を結んでいる上、圧倒的なマシンを手にしていることから、他チームに移籍する可能性は全くないと思われていた。少なくとも開幕前までは。 しかしクリスチャン・ホーナー代表による女性スタッフへの不適切行為疑惑に端を発したレッドブル内部での権力争いにより、状況は大きく変わった。 彼の父であるヨス・フェルスタッペンが、ホーナーが代表のままではレッドブルが”バラバラ”になってしまうと懸念したことが引き金となり、フェルスタッペンの去就に対する疑問の声が挙がるようになったのだ。 さらにサウジアラビアGPでは、メディアに対するリークメールへの関与が疑われたヘルムート・マルコ(レッドブルのモータースポーツ・アドバイザー)が解任された場合、自らもチームを離れるだろうとフェルスタッペンが警告した。 サウジアラビアGPの週末に繰り返されたコメントを見る限り、フェルスタッペンがレッドブルに残るのは、マルコがレッドブルの一員であり続ける場合のみであることは疑いようがない。 フェルスタッペンはマルコについて「僕は、彼が常にチームに残るべきだと、非常に明確にしてきた」と語った。 「誰もが自分の役割を持っている。もちろん、ディートリッヒ(マテシッツ/レッドブル共同創業者)が亡くなってから、いくつかの仕事は分割された。僕は常に、ヘルムートが生きている限り今後もここに留まらないといけないと言ってきた。昨年のカタールGPのあともそうだ。それが変わらないことを願っている」 フェルスタッペンの気持ちがハッキリしているとはいえ、F1において契約はかなり強固なものであり、チーム内で起こっている特定のことが気に入らないからといって、普通ならドライバーが突然契約を破棄することはできない。 多くの場合、契約を解除する唯一の方法は特定の契約解除条項であり、それは契約締結時に両者が約束した明確な理由によってのみ行使される。 こうした条項は、パフォーマンスを条件にしたものも多く、ドライバーが特定の目標を達成できなければ解雇されたり、チームのマシンが一定の成績を残せなければドライバーが契約を解除できたりすることがある。 また条件が設けられていない場合もある。メルセデスはルイス・ハミルトンとの契約にそうした条項を設けており、ハミルトンは2年契約を途中で解除し、2025年のフェラーリ移籍を決めている。 一方で契約解除条項がより具体的な内容になることもあり、チーム上層部の人事異動があった場合に行使できるようになっているケースもある。 フェルスタッペンの場合、ここ数週間で契約にそのような条項があることが明らかになった。 そのため、もしマルコがレッドブルの構想から外れた場合、自身の”将来”はおそらく別の場所になるだろうと、フェルスタッペンがはっきりとコメントした理由も説明がつく。 しかしこの契約解除条項について最も興味をそそられるのは、レッドブルがフェルスタッペンと契約を交わした2022年当初、この条項は契約に含まれていなかったらしいということだ。 情報筋によると、この状況は最近追加された契約の補遺に含まれているという。 さらに興味深いことに関係者曰く、この追加条項についてチームもホーナー代表も関与しておらず、フェルスタッペンとマルコが一方的に決めたものであるという。 マルコはレッドブル・レーシングの2人の取締役のうちの1人であり、チームに代わって行動することができるのだ。 この条項の存在が一般に知られるようになったのは、フェルスタッペンの将来が世間で議論されるようになったここ数週間のことだ。 レッドブルはこの条項がいつ、どのような経緯で契約に盛り込まれたのかについてコメントを控えているが、その存在はマルコが自分のポジションを守り、フェルスタッペンがチーム上層部に対する安心感を確保するのに役立っている。 またフェルスタッペンにとってはレッドブルを去る明確な道であり、マルコに献身しているという彼の言葉が本物であることを証明している。 フェルスタッペンは最近、F1で最速のマシンをドライブすることよりもチーム内のマネジメント体制が重要だと語っている。 「結局のところ、チーム内の人間関係とコミュニケーションが重要なんだ。もし、自分にとってとても重要なことがチーム内で消えてしまったら……そんなことが起きたらやりきれない状況になる」 「僕は常にそのことをオープンにしてきたし、みんなもそれを知っている」 いくらレッドブルが今のF1を支配しているからといって、もはやフェルスタッペンの離脱は起こり得る可能性がとても低いレアケースだとは見なされていない。 メルセデスやアストンマーティンといったライバルチームがレッドブルの動向を注視しているのも不思議ではない。なぜなら来年、スタードライバーを獲得する絶好のチャンスが訪れるかもしれないということを知っているからだ。
Jonathan Noble