カネ儲け企む"不良医師"がウヨウヨ湧く…麻酔科医が警鐘「東京都の"無痛分娩費"助成で起きる怖すぎる事態」
■予想1:夜間働く麻酔科医が確保できず、無痛分娩はさほど増えない 現在の無痛分娩でもっとも一般的な方法が「硬膜外無痛分娩」である。陣痛の痛みは、子宮から背骨の中にある脊髄という神経の束を通じて脳に伝わる。よって、脊髄を取り囲む硬膜という膜の外側の狭い空間(硬膜外腔)に細いチューブを留置し、そこから麻酔薬を投与することで脊髄神経に麻酔をかけて、脳への痛みの伝達をブロックすることで陣痛や下半身の痛みを軽減する。 陣痛で3分ごとに痛みのために動き回る妊婦にチューブを入れるのは麻酔科専門医でも経験やテクニックを要するし、チューブを入れた後も「麻酔薬の濃度」や「左右の麻酔が均等」など微調整する必要がある。緊急に帝王切開に転じる可能性もあるので、麻酔科医は分娩終了まで待機する必要がある。 無痛分娩による医療訴訟はいくつか事例があり、2021年に「母子とも障害がのこって3億円」、2023年に「母体死亡で7500万円」の判決が報道されている。よって、十分な麻酔科医数を確保できなかった施設では、医療安全を度外視してまで積極的に無痛分娩件数を増やすとは考えられない。 現在の無痛分娩対応施設でも、ホームページをよく読むと「平日昼間のみ」「麻酔科医不在時は対応しません」「同時に最大2例まで」などと明記されていることがある。また、都内の有名な無痛分娩だと「妊娠7週(2カ月後期)に申し込んだら満杯で断られた」といったケースは現在でもザラなので、これが「妊娠5~6週」に早まる可能性は高いだろう。 ■予想2:地方より麻酔科医を引き抜いて、都内の無痛分娩が増える 無痛分娩に積極的な都内の病院では、麻酔科医をヘッドハンティングする産科医院も現れる可能性が高い。地方の医学部などの地域枠で合格した医師も、おおむね卒後10年程度でその地域で働くという義務を終えるので、仮に東京の有名病院が30代の地方医師をスカウトすれば、応じる医師は存在するだろう。 麻酔科医が増えた東京の病院は、積極的に無痛分娩を増やすことが可能になり、補助金による増収も期待できるので、(東京都民は)めでたしめでたしである。 しかしながら、麻酔科医不足は地方がより深刻で、「10年後には県内では心臓手術ができない」と囁かれる県は複数存在する。東京都の無痛分娩推進が地方医師不足を悪化させるシナリオは否定できない。