カネ儲け企む"不良医師"がウヨウヨ湧く…麻酔科医が警鐘「東京都の"無痛分娩費"助成で起きる怖すぎる事態」
小池百合子都知事は1月6日、都内妊婦を対象にした無痛分娩費用の助成計画を公表した。痛み軽減で出生率アップの期待をする声もあるが、麻酔科医の筒井冨美さんは「安全な無痛分娩のためには麻酔科医のマンパワー増加が必須。しかし、深夜・明け方に多い出産に付き添える人材は限られており、補助金目当てにカネ儲けをする“不良医師”も出てくる恐れがある」という――。 ■小池百合子都知事が掲げた「無痛分娩補助」の問題点 2025年1月6日、小池百合子都知事は東京都内の妊婦を対象に、2025年度から出産時の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩の費用を助成することを公表した。昨夏の知事選で小池氏が公約に掲げていた無痛分娩助成が実現される見込みとなったのだ。小池氏は「子育てをしたいと希望を持つ方が、その思いを実現するようにサポートしていく」と語り、高い意欲を示した。 出産時の無痛分娩は近年増加しており、日本産婦人科医会によると、総分娩数に占める無痛分娩の割合は2017年には5.2%だったが、2022年には11.6%と増加傾向であり、東京都に限れば約30%弱(2023年データ)と報告されている。 妊婦の心身の負担を軽減し、産後うつ予防効果などが期待できるが、保険診療の対象ではないため10万~20万円程度の追加料金を要求する施設が多い。費用面から無痛分娩を断念する妊婦も多いとみられ、妊娠・出産情報誌『ゼクシィBaby 妊婦のための本』が行ったアンケートでは、無痛分娩を選ぶ際にハードルとなったことについて、「費用の高さ」を挙げた人が6割と最多だった。都道府県レベルで無痛分娩の助成制度が実現できれば、日本では初めてとなる。 SNSでの反応も「さすが女性知事」「目の付け所が違う」「産むなら東京に引っ越そうかしら」など、おおむね好評である。 しかしながら、麻酔科医である私は単純に喜ぶことはできない。安全な無痛分娩の増加には、補助金のみならず麻酔科医のマンパワー増加が必須だが、麻酔科医のマンパワー確保については具体的には言及されていなかったからである。 ■働き方改革/女医増加とは真逆、無痛分娩という仕事 無痛分娩の最大の難所は、陣痛に伴う処置なので、緊急対応が多いことである。陣痛は土日夜も無関係に発生するので「午前2時に陣痛が来たので無痛分娩開始、午前5時に胎児徐脈になり緊急帝王切開」のようなつらい時間帯の仕事はザラである。 一部の産科病院では計画分娩と称して、陣痛促進剤などを使用して可能な限り平日昼間の分娩を誘導しているが、必ずしも計画どおりに分娩は進まず、結果的に夜中の出産になる可能性も少なくない。 一方、医師の中でも麻酔科医は女性率が高いことが知られており、日本麻酔科学会会員のうち44歳以下は過半数が女性であり(2023年報告)、さらに増加の一途である。そして家庭を持った女医は、土日祝夜勤務や緊急呼出のないワークスタイルを好む者が多い。 そして、2024年度から始まった「医師の働き方改革」は「時間外労働月80時間以内」という制限を病院長に課したので、時間外労働する医師の確保が困難になった。ただでさえ不足気味の麻酔科医の中でも、「夜間に稼働する麻酔科医を大量に確保」するのは、決して簡単なことではない。 というわけで、2025年度以降に東京都の無痛分娩増加が実現するのか、3つの予想を考えた。