ユニチカが繊維事業から撤退、収益性の低下や原燃料/輸入材価格の高騰が影響
ユニチカは2024年11月28日、構造改革の一環として祖業の繊維事業から撤退する方針を固めたと発表。ユニチカ、日本エステル、ユニチカスパークライトが、三菱UFJ銀行と連名で、地域経済活性化支援機構に事業再生計画を提出して、同機構から再生支援を受けることが決定したことも公表した。 併せて、三菱UFJ銀行や三井住友銀行、みずほ銀行といった主要な取引銀行などに300~400億円ほどの債務放棄を要請している。これらの銀行は債権放棄に応じるために調整を進めており、債権放棄日は2026年3月下旬を予定している。
繊維事業撤退の背景
ユニチカは1889年に尼崎紡績として創業し、1918~1969年は大日本紡績の社名で紡績業を展開してきた。1969年には、グループ会社の日本レイヨンとの合併により総合繊維メーカーのユニチカとなった。 同社は、成長基盤の構築に向けてこれまで複数回にわたり構造改革を行ったが、2024年3月期には、円安/原燃料価格の高騰によるコスト上昇、市況の変化に伴う需要減少の他、高分子事業では東南アジアを中心とする海外での競争激化による販売単価下落、衣料繊維におけるコモディティ化による収益低下の影響を受けて、連結決算開始以来、初めての営業赤字を計上した。また、減損の会計処理も実施したことで54億円の当期純損失を計上。2024年度は、人件費削減などの一時的な対策により営業黒字を確保できる見込みだが、実質的な収益力の回復には至っていないという。 収益力が回復しない大きな要因として、同社は、これまでの構造改革の対象が低採算事業とノンコア事業の個別の対策にとどまり、収益性低下や硬直化したコスト構造などの潜在的な課題に対応しきれていなかった、衣料繊維やポリエステル繊維関連の各事業に抜本的な対策を行えなかったことを挙げている。 加えて、近年、グローバルにおける社会経済情勢の変化を背景とした原燃料価格の高止まりなどによるコスト上昇、市況の変化に伴う需要の減少、東南アジアを中心とする海外市場での価格競争激化、海外も含めたマーケットの変容などが進行し、こうした課題を有する事業が引き続き営業赤字となっている。 同社グループ収益の中核を成す高分子事業でも、ナイロンフィルムを扱う海外子会社における規模拡大により生産能力が過剰となり、コストが上昇、事業収益力の低下を招くなど新たな課題を抱え、これらの収益性改善も急務な状況となっている。