道長と三条天皇、好敵手のそれぞれの終わり…「摂政」即辞任、道長が己に下した決断とは?【光る君へ】
「ささやき女将」を思い出す!? 摂政・道長くん
頼通の抵抗で三条天皇は白旗を上げ、道長の孫となる後一条天皇が即位。外祖父に当たる道長は、見事に摂政の座を射止めた。まだ8歳の天皇に、公卿たちの質問に対する返事を耳元で囁く姿には、「え? こんな伝言ゲームというか囁き女将的なことなの? 摂政って」「道長くんがささやき親父になってしまった」「一斉に船場吉兆のささやき女将を思い出しているTL」という懐かしい話題が。結構昔の話なので「なんのこと?」と思う人は「ささやき女将 船場吉兆」で検索を! そして譲位から1年ちょっとで、三条天皇は愛妻・娍子(朝倉あき)と息子・敦明親王(阿佐辰美)に看取られて崩御。もし健康問題さえなかったら、もう少し道長をキリキリ舞いさせ、もしかしたら摂関政治すら終えんさせていたかもしれない。ポテンシャルを出しきれなかった天皇の退場に「なんだったんだろうなこの人の人生って」「政では闇の人生だったかもしれないが、(東宮時代からの)家族には恵まれた、お互いを芯から慈しんだ豊かな人生、せめてそう思いたい」などの追悼の言葉が聞かれた。
具体的な志などなかったことに気付かされた道長だが…
こうして最後の大物を倒すことができた道長。摂政と左大臣を兼務という、今で言えば内閣総理大臣兼天皇陛下代理みたいな、まさに無敵の立場となったわけだ。しかし藤原公任の「周りがそれを歓迎していないよ」という忠告と、まひろの「あなたが降りても次の人がいる」という引導を渡すような言葉によって、両方の職をいっぺんに辞めることに。かつて公任は第26回で、道長を「己のために生きておらぬ」と評したが、それは逆に言えば「周りが求めなければすべてを放り出せる」ということで、まさに今回そのときが来たと、道長には思えたのだろう。 この流れにSNSは「公任くんがマジレスしとる。これは本当にマジなやつ!!」「公任だからできる苦言だよね。道長はほんま幼馴染に恵まれたよ」「摂政になって栄華とは真逆の孤独の道長」「参議たちが言いたいのは多分『摂政のみにしろ』なんですが、道長は自分が疎んじられている点を過剰にとらえているよう」などの分析の言葉が並んだ。 まひろが望む「民のための良い政治」をするために、がんばって政のてっぺんを目指したけど、いざそこに立ってみたら、息子に伝えるような具体的な志などなかったことに気付かされる。前回の43回で藤原実資(秋山竜次)が指摘した「民の顔なぞ見えておられるのか?」の問いが呪いの言葉になったわけだが、そこで開き直ってポストを死守するのではなく、あっさり降りてしまうのが、結局道長くんは権力にまったく興味がなかった「三郎」の時代のままなのだなあと、ちょっとホッとした気分になった。 出世レースからコースアウトして、今後は「余生」と言える状態となった道長。これによって、まひろとの関係はグッと進むのか? あるいは予想もしない方向に向かうのか? 越前編で登場したライバル? 周明(松下洸平)も次週から再登場するようなので、まだまだ引き続きドキドキさせられそうだ。 ◇ 『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。11月24日放送の第45回「はばたき」では、まひろと道長の間にできた娘・賢子(南沙良)が宮仕えを開始するところと、「宇治十帖」を書き終えたまひろが旅に出るところが描かれる。 文/吉永美和子