YMOチルドレンが描いた未来は今ここに 高野寛がデビュー35周年に発表した自身の作品について語る
「子供時代を転校生として過ごしていたので、どこにも属してない状況を自ら望んでいたのかもしれないですね(笑)。あとはYMOの影響もあると思います。はっぴぃえんど(細野晴臣が在籍したバンド)、サディスティック・ミカ・バンド(加藤和彦、高橋幸宏などが在籍したバンド)もそうですが、当時はそれほど売れてないんですよ。でも作品は時代を超えた普遍性があって、今でも新鮮な音楽として聴かれている。そういう在り方にリスペクトを持っていますし、そのときの流行に合わせるのではなく、新しい表現を提案するのがアートだという学びを得たのかなと」 カセットテープの多重録音からはじまり、コンピューターでの音楽制作、さらにAIの登場まで、時代の変化も実感できる書籍「続く、イエローマジック」。今年12月に還暦を迎える高野寛は、今も未来の音楽を見つめ続けているようだ。 「本を書くことで、自分のキャリアがいかに寄り道ばかりで、複雑に曲がりくねっていたかを痛感しました。(活動スタイルや作品を)理解してもらえないことも多く、“じつはそうじゃないんですよ”と説明ばかりしていた気もしますが(笑)、デビュー35周年のタイミングでこれまでを振り返ることができたのはよかったと思います。次の活動ですか? せっかく「Modern Vintage Future」みたいなアルバムを作ったので、エレクトロ的なライブをやりたくて。映像も使ったステージができるように準備しているところですね」 (取材・文/森 朋之) たかの・ひろし/ミュージシャン。1964 年生まれ。1988 年、高橋幸宏プロデュースによるアルバム『hullo hulloa』でソロデビュー。ほとんどの楽曲の作詞・作曲・編曲・ギター・プログラミングを自ら手掛けるスタイルで、20枚を超えるソロアルバムを発表。宮沢和史らと結成したGANGA ZUMBA、高橋幸宏・原田知世ら と結成したpupa、BIKKE・斉藤哲也と結成したNathalie Wise などのバンドでも活動。2013年に京都精華大学ポピュラーカルチャー学部・音楽コース特任教授に就任、2018~2023年に同学部客員教授を務めた。2023年にデビュー35周年を迎え、多方面で精力的に音楽活動を行なっている。2024年春・デビュー35周年を期に、ミニマルやアンビエントなどポップスの外側にある音楽を中心としたソロユニット「HAAS a.k.a. Hiroshi Takano」も始動。11月11日に35周年記念書き下ろしエッセイ「続く、イエローマジック」を、11月27日に35周年記念アルバム「Modern Vintage Future」をリリース。
森朋之