野球界に輝く「リストラの星」が、次に目指す活躍のフィールドは?〔後編〕
西武、ソフトバンク、独立リーグでの選手生活を経て、引退後もコーチや監督として野球界の最前線に立ち続けてきた宮地克彦氏。現在は女子野球チーム「九州ハニーズ」の監督兼球団社長として、選手育成とチーム運営に情熱を注いでいます。そんな宮地氏にこれまでの来歴や指導者として歩むキャリアへの想いを聞いた。
女子野球という新しい文化のこれから
―現在はいろいろなチームの指導にあたっています 実業団や女子野球チーム、全国の少年野球チームを定期的に教えてまわっています。その中の一つ、東京都江戸川区を中心に活動している学童野球チーム「しらさぎ野球部」にはスペシャルアドバイザーとして関わっています。 教える機会といっても年に1~2回程度です。普段の練習は保護者の方々や監督・コーチが中心となって見てくれています。だからこそ大事なのは、子どもたちへの指導に一貫性を持たせることなんです。たとえばバットの構え方やボールの投げ方がコーチごとに違うと、選手たちは混乱してしまいます。船頭が多いと道に迷う、結果としてチーム全体がうまく回らなくなるんです。 そこで迷いが生じたときにすぐ立ち返ることができる場所として、外部から年数回しか顔を出さない私を“軸”としました。普段の練習から《宮地の教え》を実践してもらうことで、監督・コーチと保護者の方々、子どもたちがつくる三角形の中心に私がいれば練習に一貫性が保たれますし、うまくいったらみんなの努力、失敗したら宮地のせいにできるためモチベーションも下がりません。 そうした取り組みが少しずつ実り、2024年の学童軟式野球大会 (第5回くら寿司・トーナメント2024 第18回学童軟式野球全国大会ポップアスリートカップ 星野仙一旗争奪) では全国ベスト3にまで勝ち残るチームに育ちました。本当にうれしかったですし、子どもたちにはたくさんのことを学ばせてもらっています。
―女子野球のこれからについて この10年で女子野球部を持つ高校が増え、少しずつ根づいてきています。ただ、大学や短大となると全国でまだ20校程度しかありません。高校で野球を始めた選手たちが次のステージでも活躍できる環境をどう整えるか、それがいまの大きな課題です。 だからこそ、私が監督を務める「九州ハニーズ」のようなクラブチームが中心となって、女子野球の未来を広げていきたいんです。選手たちが目標を持って進める場所、夢が叶うステージを作り、日本中に女子野球の文化を根づかせる──そんな未来を描きながら、日々取り組んでいます。 現在、NPBでは阪神、巨人、西武の3球団だけが女子チームを持っています。12球団すべてに女子チームが誕生したらどうでしょう?男子のナイター前に女子野球の試合が行われる。ジャイアンツ対西武の女子チーム同士が熱い試合を繰り広げる。そんな未来が実現すれば、野球ファンにとってさらにワクワクする世界が広がりますよね。 私はソフトバンクのOBでもあるので、九州ハニーズの選手たちに同じユニフォームを着せたいという夢があります。将来、ソフトバンクレディースが生まれ、「実は昔、ハニーズって名前でやっていたんだよ」と振り返れる日が来たら最高にうれしいですね。