“吉祥の鳥”トキの繁殖で日本と中国が協力し合えるものとは?
このほか野生のトキは昨年末現在の統計で532羽いる。絶滅の危機にあったトキが、合わせて700羽を超えるまで数を回復した。 ■日本と中国が協力できるテーマの「実例」がトキの繁殖 ここで話題を少し広げて、日本と中国の関係について考えたい。昨日(6月19日)に平壌で、北朝鮮の金正恩総書記とロシアのプーチン大統領が首脳会談を行ったが、北朝鮮とロシアが蜜月関係を演出するのは、日本を含めた主要国と中国の対立という要素があるからだ。 先日、岸田首相も出席してイタリアで開かれたG7首脳会議も、中国非難の場となった。ただ、日本と中国に限っても、今の関係のままでよいなんて、多くの人は思っていないはずだ。 日本と中国が協力し合えるテーマは何か――。その一つは環境問題。とりわけ、きょう話してきたトキの保護、繁殖プロジェクトは、そのモデルケースになると思う。 「過去の実績」もある。今から43年前の1981年、中国でもトキは絶滅したと考えられていた。ところがこの年、陝西省で、野生のトキ7羽が見つかった。中国は国を挙げて、トキの保護にあたった。これを後押ししたのが日本からのトキ保護の技術支援、そして資金面での支援だった。これらが実を結び、中国ではトキの数が増え続けていった。 同じく1981年。日本でも野生のトキ5羽を捕獲。これで野生のトキはいなくなったが、とにかく絶滅させてはいけないという判断だった。しかし2003年には、捕獲した5羽のうち、最後の国産トキが死んでしまい、日本のトキは絶滅した。この間、中国からトキを借りたり、また国産のトキを中国に貸し出したりして、ペアリング=種の継承に努めたが、実を結ぶことはなかった。 国産トキは絶滅した。しかし、国産トキが絶滅する前の1999年、中国からオスとメスのペアが日本に贈呈された。中国からのペアの間に子が誕生し、日本でもようやくトキの人工増殖が成功した。また、交配の範囲を広げるために2000年代には中国産のトキが日本に供与され、確実にその数を増やしていった。その結果、現在、日本には700羽がいるようになった。