液状化した “まち” の今…残るか、離れるか 公費解体が始まるも課題は山積 富山
12月20日、再び男性を訪ねると―― 傾いた自宅に住む80代男性 「畳から全部まくって束石の上に柱ある。それが全部傾いてたから直してちょっと水平にしてもらっただけ」 市の補助金を使い居間と台所を補修しましたが、補助金だけでは自宅の一部しか直すことが出来ず、寝室は今も傾いたままです。扉も―― 傾いた自宅に住む80代男性 「全然(扉が)閉まらない。寒さは我慢せんなん」 「傾き」に苦しむ日々が続いています。親族からは市外のアパートへ転居するよう勧められていますが歳をとり、知り合いのいない場所で生活するのは考えられないといいます。 傾いた自宅に住む80代男性 「(この先は)どうもこうもないわ。諦め。ただ1日1日生き延びていくだけなが」 暮らしの大きな妨げになっているこの段差が完全復旧するまでにあと2年はかかる見通しです。 ■”まち”を離れる決意…「負の資産を残すわけにいかない」 富山市の運河沿いに位置する東蓮町も元日、液状化に見舞われました。富山市東蓮町で唯一、自宅が全壊の判定を受けた西尾英幸さん。大きく傾いた家は11か月以上たっても、そのままの状態でした。 富山市は11月中旬になって、ようやく公費解体を開始。西尾さんも自宅の解体にむけて、片付けに追われていました。 西尾英幸さん 「公費解体がようやく決まって業者も決まって、それで(富山市から)初めて家の中のものを出してくれって。だから何もしてなかった。時間はあったけど…」 12月、西尾さんの自宅も公費解体が始まり、思い出の詰まった家との別れに子どもたちも駆けつけました。 次女 藍里さん 「帰ってくる場所があるっていうのは、いいなと思っていたので、残念です」 西尾英幸さん 「やっぱりここに家を建てようかなとかでもリスクのあるところに建てるよりも同じお金を使うなら外で安心したところでと思うし、(子どもたちに)負の資産を残すわけにいかないしね」 いまは県営住宅で暮らしている西尾さんはこの「まち」を離れることを決めました。液状化により約70世帯で家が傾くなどの被害を受けた東蓮町ではすでに13世帯が「まち」を離れています。
液状化したまちでは、まちに残るのか、離れるのか、住民たちが判断に迫られている現状が見えてきました。 富山県内で液状化対策の工法が決まった地域はありませんが、富山市は12月、地下水の水位を下げる工法を実施する可能性が高いと住民に説明しました。 ただし実施には住民全員の同意が必要で、地下水を汲み上げるポンプの維持管理費などに年間480万円の負担が住民側に求められることや、工事は最低でも5年ほどかかるとして、今後の合意形成が課題となっています。
チューリップテレビ
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